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発生生物学:肺胞における毛細血管の細胞タイプの特化

Nature 586, 7831 doi: 10.1038/s41586-020-2822-7

哺乳類の肺では、外見的には均一な毛細血管の網状構造が各肺胞に巻き付いて膨大な呼吸表面を形成しており、それを通して酸素が血液中へと移行する。今回我々は、単一細胞解析を用いて、肺胞の毛細血管内皮の細胞タイプ、発生、再生、進化を調べた。その結果、肺胞の毛細血管は、肺胞を覆う上皮と同様にモザイク状であることが分かった。肺胞内皮は2種類の細胞タイプが混じり合ってできており、これらは複雑な「スイスチーズ」様の形態と、それぞれ別の機能を持つ。我々が「アエロサイト」と名付けた1つ目の細胞タイプは、ガス交換と白血球の輸送に特化した細胞で、肺に固有である。一方、gCap(「一般的な」毛細血管)と名付けたもう1つの細胞タイプは、血管運動神経緊張度の調節に特化しており、毛細血管の恒常性維持と修復において幹/前駆細胞として機能する。これら2つの細胞タイプは二分化能を持つ前駆細胞から発生して徐々に成熟し、疾患や加齢による影響の受け方に違いがある。この細胞タイプの特化は、マウスとヒトの肺では保存されているが、ワニやカメの肺では見られないため、哺乳類の肺の進化過程で生じたことが示唆される。肺胞の毛細血管における細胞タイプの特化が見つかったことで、健康な状態、疾患、進化における血液空気関門やガス交換の構造、機能、調節、維持に関する我々のこれまでの見方が大きく変わるだろう。

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