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生物工学:薬効のあるトロパンアルカロイドの酵母での生合成

Nature 585, 7826 doi: 10.1038/s41586-020-2650-9

ナス科植物由来のトロパンアルカロイドは神経伝達物質阻害剤として神経筋疾患の治療に使われており、世界保健機関(WHO)によって必須医薬品に分類されている。しかし、世界的な供給には難題が多く、このような医薬品の不足はたびたび起こっている。またオーストラリアの山火事やCOVID-19のパンデミックなどの事態によって、サプライチェーンのさらなる脆弱性も明らかになってきており、環境変動や社会経済的変革に揺るがされることのない、迅速に展開可能な生産戦略が必要とされている。今回我々は、医薬品として用いられるアルカロイドのヒヨスチアミンとスコポラミンを、単純な糖とアミノ酸から出発して産生できるようにパン酵母の遺伝子操作を行った。機能ゲノミクスによって不明な経路の酵素を突き止め、タンパク質工学によって液胞への輸送を介してアシルトランスフェラーゼの機能を発現させ、異種輸送体の発現によって細胞内配送経路決定を容易にし、酵母株の最適化によって力価を最適化した。これらを組み合わせた統合システムでは、酵母、細菌、植物、動物由来の20種類を超えるタンパク質を適応させてから細胞内の6か所に配置し、植物でのトロパンアルカロイド生合成の空間的構成を再現した。微生物による生合成のプラットフォームができたことで、神経疾患の新しい治療薬となるトロパンアルカロイド誘導体の発見が加速されると考えられ、スケールアップによって、これらの必須医薬品のロバストで迅速な供給が可能となるだろう。

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