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腫瘍免疫学:がんのSLC43A2はT細胞のメチオニン代謝とヒストンメチル化を変化させる

Nature 585, 7824 doi: 10.1038/s41586-020-2682-1

腫瘍では、エピジェネティックなパターンの異常がエフェクターT細胞の機能不全と相関しているが、この連関の原因は分かっていない。今回我々は、腫瘍細胞がCD8+ T細胞のメチオニン代謝を破壊し、それによってメチオニンおよびメチル基供与体であるS-アデノシルメチオニン(SAM)の細胞内レベルが低下して、その結果ヒストンH3リシン79のジメチル化(H3K79me2)が見られなくなることを明らかにする。H3K79me2の喪失はSTAT5の発現低下とT細胞免疫の障害につながった。機構的には、腫瘍細胞はメチオニンを大量に消費し、メチオニン輸送体SLC43A2を高レベルで発現することによって、メチオニンに対する競合相手であるT細胞を打ち負かした。腫瘍のSLC43A2を遺伝学的および生化学的に阻害すると、T細胞ではH3K79me2がまた見られるようになり、自発的でチェックポイント誘導性の腫瘍免疫が強化された。さらに、メチオニンを補充するとT細胞でのH3K79me2およびSTAT5の発現が改善し、担がんマウスおよび大腸がん患者ではこうした改善に伴ってT細胞免疫が強化された。臨床的には、腫瘍のSLC43A2はT細胞のヒストンメチル化および機能的な遺伝子シグネチャーと負に相関していた。我々の結果は、腫瘍微小環境におけるメチオニン代謝、ヒストンパターンおよびT細胞免疫の間の機構的なつながりを明らかにするものである。従って、がんのメチオニン消費は免疫回避機構の1つであり、がんのメチオニンシグナル伝達を標的とすることは、免疫療法の手法となる可能性がある。

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