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微生物学:腸の微生物が協調的に作用することで脊髄の炎症を増悪させる

Nature 585, 7823 doi: 10.1038/s41586-020-2634-9

腸の微生物が多発性硬化症などの自己免疫疾患において病原性に関わる役割を担うことを示す証拠が集まってきている。実験的自己免疫性脳脊髄炎(多発性硬化症の動物モデル)での研究に加えて、ヒトでの研究から、腸の微生物が多発性硬化症の発症あるいは重症度に関与していることが示されている。しかし、腸の微生物が脊髄などの腸外の組織の炎症に影響を及ぼす仕組みは分かっていない。今回我々は、腸の微生物による2種類のシグナルが協調して、小腸においてミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)特異的に応答する自己反応性T細胞を活性化することを明らかにする。マウスで実験的自己免疫性脳脊髄炎を誘導すると、小腸においてMOG特異的CD4+ T細胞が認められた。無菌マウスに1種類の細菌のみを定着させた実験から、小腸から単離した新種のエリュシペロトリクス科の菌株がアジュバント様に機能して17型ヘルパーT細胞の応答を増強することが分かった。小腸の内容物のショットガン塩基配列解読により、MOGと交叉性を示す可能性のあるペプチドを有するラクトバチルス属細菌Lactobacillus reuteriが見いだされた。これら2つの株を一緒に定着させたマウスは、無菌マウスあるいは1株のみを定着させたマウスよりも重度の実験的自己免疫性脳脊髄炎を示した。これらのデータは、多発性硬化症の病原性においてはこれらの微生物の存在から生じる相乗効果を考慮すべきであること、また、これらの微生物のさらなる研究が多発性硬化症の予防戦略につながる可能性があることを示唆している。

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