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遺伝学:DNA中のN6-メチルアデニンは初期発生の間にSATB1に拮抗する

Nature 583, 7817 doi: 10.1038/s41586-020-2500-9

最近N6-メチルアデニン(N6-mA)が哺乳類ゲノムで発見され、これがエピジェネティック調節機構として働いている可能性が示唆されている。しかし、N6-mAの生物学的役割とその機能を発揮している分子経路はまだ解明されていない。本論文では、N6-mAが、初期発生において細胞の運命が変化する際に、エピジェネティックな全体像を変化させる重要な役割を果たすことを明らかにする。マウス栄養芽層幹細胞の発生の際にはN6-mA修飾が増加しており、特にストレスで誘発されるDNA二重らせん不安定化(SIDD)領域で増加が著しいことが分かった。SIDD領域は、トポロジカルストレスに誘発される二重らせん塩基対解消につながりやすく、大規模なクロマチン構造の構築に重要な役割を担っている。SIDD領域と相互作用する重要なクロマチンオーガナイザーであるSATB1とSIDDの間のin vitroでの相互作用は、N6-mAが存在すると500分の1以下に低下することが明らかになった。また、N6-mAの蓄積は、SATB1のクロマチンへの結合を妨げることによって、in vivoでのSATB1の機能と拮抗することも分かった。これと合致して、N6-mAはユークロマチンとヘテロクロマチンの境界で、ユークロマチンの拡大を制限する働きをする。細胞培養モデルやin vivoで栄養芽層細胞が発生する際の遺伝子調節には、SIDD–SATB1の相互作用のN6-mAによる抑制が不可欠である。これらの知見を総合することにより、SATB1を介するN6-mAの働きの予想外の分子機構が示され、初期胚発生におけるDNAの修飾、DNAの二次構造と大規模なクロマチン領域の間の結び付きが明らかになった。

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