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進化学:6例の参照品質ゲノムから明らかになったコウモリの適応の進化

Nature 583, 7817 doi: 10.1038/s41586-020-2486-3

コウモリには、飛行、反響定位、極めて長寿、独特な免疫など、並外れた適応がいくつも見られる。これらの形質の分子基盤や進化の理解には、高品質ゲノムが重要である。今回我々は、ロングリード塩基配列解読と最先端のスキャフォールディングプロトコルを組み合わせることで、6種のコウモリ[キクガシラコウモリ(Rhinolophus ferrumequinum)、エジプトルーセットオオコウモリ(Rousettus aegyptiacus)、ウスイロオオヘラコウモリ(Phyllostomus discolor)、オオホオヒゲコウモリ(Myotis myotis)、クールアブラコウモリ(Pipistrellus kuhlii)、パラスオヒキコウモリ(Molossus molossus)]について、我々の知る限り初めての参照品質ゲノムを構築した。ゲノムのアライメントからオルソログを推定する独自開発のソフトウエア「TOGA(Tool to infer Orthologs from Genome Alignments)」による遺伝子予測の結果を、de novo遺伝子予測や相同遺伝子予測の結果、さらにはショートリードおよびロングリードのトランスクリプトミクスデータと統合することで、完全性の高い遺伝子アノテーションが得られた。コウモリのローラシア獣上目内での系統発生学的な位置を解明するため、ゲノムのオルソロガスなタンパク質コード領域と非コード領域の包括的なデータセットに複数の系統発生学的手法を適用したところ、コウモリの起源がScrotifera類内の基部にあることが突き止められた。ゲノム規模のスクリーニングからは、コウモリの祖先系統における聴覚関連遺伝子に対する正の選択が明らかになり、これによって喉頭反響定位がこのクレードの祖先形質であることが示された。また、免疫関連遺伝子(炎症性NF-κB調節因子など)の選択や喪失、抗ウイルス性APOBEC3遺伝子群の拡大が見いだされ、コウモリの非常に優れた免疫に寄与する可能性のある分子機構が明らかになった。コウモリゲノムに組み込まれた多様なウイルス遺伝子の情報から、ウイルス感染への耐性の履歴についてのゲノム記録が得られた。さらに我々は、コウモリ特異的なマイクロRNAの多様性を明らかにし、これを実験的に検証した。この多様性は、コウモリ特異的な遺伝子発現プログラムを調節している可能性がある。我々の参照品質のコウモリゲノムは、コウモリの適応のゲノム基盤を解明・検証するのに必要な情報資源を提供するとともに、ヒトの健康や疾患に直接関係する研究において数々の新たな手段を促進するものである。

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