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心血管疾患:非至適コレステロール値が見られる中心地域の世界的な変遷

Nature 582, 7810 doi: 10.1038/s41586-020-2338-1

高い血中コレステロール値は一般に、豊かな西洋諸国で見られる特徴だと考えられてきた。しかし、食餌や行動などの血中コレステロール値の決定要因は全世界的に急速に変化しており、割合はさまざまだが各国で脂質降下薬が用いられている。これらの変化は、ヒトの健康に対して異なる効果を持つ高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールと非HDLコレステロールのおのおのに対して、異なった影響を及ぼす可能性がある。しかし、HDLコレステロールと非HDLコレステロールのレベルの経時的な動向に関する全世界的な解析は、これまで報告がない。今回我々は、18歳以上の1億260万人を対象に血中脂質を計測した1127の集団ベース研究をプール解析し、200か国における1980〜2018年の総コレステロール、非HDLコレステロール、HDLコレステロールレベルの平均値の動向を推定した。その結果、1980〜2018年の総コレステロール値や非HDLコレステロール値については、全世界的にほとんど変化がないことが分かった。これは、特に東アジアおよび東南アジアなどの低所得国および中所得国における増加と、特に北西ヨーロッパなどの高所得の西洋諸国や中央および東ヨーロッパ諸国における減少とを合わせた正味の影響である。結果として、心血管疾患リスクのマーカーである非HDLコレステロールレベルが最も高い国は、1980年にはベルギー、フィンランド、グリーンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、スイス、マルタなどの西ヨーロッパ諸国だったのが、トケラウ、マレーシア、フィリピン、タイなどのアジア太平洋諸国へと変わった。高い非HDLコレステロール値を原因とする2017年の死亡者数は世界で390万人と推定され(95%信頼区間370万〜420万人)、その半数は東アジア、東南アジア、南アジアで生じていた。以前は北西ヨーロッパ、北米、オーストラリアなどの高所得国に特徴的であった非至適コレステロール値が、東アジアや東南アジア、オセアニア諸国で影響を及ぼす特性へと移行しており、こうした脂質関連リスクに関する地域情勢の世界的な変化は、世界中で、栄養を改善し治療を受けやすくするために集団ベースでの政策や個別介入を用いる動機付けとなるだろう。

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