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ゲノミクス:スイレンのゲノムと顕花植物の初期進化

Nature 577, 7788 doi: 10.1038/s41586-019-1852-5

スイレンは、被子植物スイレン目に属する。アンボレラ目(Amborellales)、スイレン目(Nymphaeales)、アウストロバイレヤ目(Austrobaileyales)は合わせて「ANAグレード被子植物」と呼ばれ、これらは現生の主要被子植物につながる系統から最も早く分岐した系統の現生の分類群である。今回我々は、熱帯スイレンの一種Nymphaea colorataの409メガ塩基のゲノム塩基配列について報告する。系統発生学的な解析から、アンボレラ目とスイレン目が、他の全ての現生被子植物に対する連続した姉妹系統であることが裏付けられた。N. colorataのゲノムと、他のスイレン19種のトランスクリプトームからは、スイレン目で全ゲノム重複が1回起きたこと、そしてそれがスイレン科(Nymphaeaceae)とおそらくハゴロモモ科(Cabombaceae)で共有されていることが明らかになった。この全ゲノム重複で保持されている遺伝子の中には、花成への移行と花の発生を調節する遺伝子のホモログが含まれる。N. colorataにおける花器官のABCE遺伝子のホモログの幅広い発現は、初期の被子植物にも、同様に広範な活性を持つ花器官決定の祖先的なABCEモデルが存在したことを裏付けている可能性がある。スイレンで進化した魅力的な芳香と色は主要被子植物にも共通する特徴であり、我々はそれらの生合成遺伝子と推定される遺伝子をN. colorataで複数特定した。花の芳香をもたらすそうした化合物および生合成遺伝子からは、それらが主要被子植物のものと平行して進化してきたことが示唆された。N. colorataは系統発生学的に独特な位置にあり、そのゲノムからは、被子植物の初期進化を明らかにする手掛かりが得られる。

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