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素粒子物理学:暗黒物質の相互作用を探査するためのヨウ化ナトリウム検出器を用いた実験

Nature 564, 7734 doi: 10.1038/s41586-018-0739-1

銀河や原始放射の観測からは、宇宙の大部分が光を放たない暗黒物質からなっていることが示唆されている。暗黒物質の候補として、弱く相互作用する重い粒子(WIMP)など、いくつかの新しい種類の素粒子が提案されている。こうした粒子は、地球に設置された適切な検出器の物質中の原子核と相互作用すると期待されており、そうした相互作用の一例に原子核の跳ね返りがある。しかし、多くのコラボレーションによる協調した取り組みにもかかわらず、暗黒物質の相互作用からのそうした決定的なシグナルはまだ検出されていない。1つの例外は、DAMAコラボレーションによる、原子核の相互作用事象の割合には統計的に有意な(9標準偏差以上の)年周変化があるという、大いに議論されている主張である。年周変化は、太陽を周回する地球の軌道運動に起因する、銀河系の暗黒物質ハローに対する地球の相対速度の変化のためであると考えられる。DAMAが観測した、検出器における相互作用事象の割合の変動は、周期と位相がWIMPに予測されるものと矛盾しない。複数の研究グループが、DAMAの結果の再現を目的として、同じ標的媒体(ヨウ化ナトリウム)を用いた実験の開発に取り組んでいる。COSINE-100実験では、ヨウ化ナトリウムに予測されるバックグラウンドを上回るような事象の超過を示す証拠が存在するかどうかを決定し、年周変化の証拠を探すため、標的媒体としてヨウ化ナトリウムを用い、DAMAの主張についてモデルに依存しない検証を行っている。本論文では、最初の課題に関連する、COSINE-100 実験の初期運用で得られた結果を報告する。COSINE-100実験の最初の59.5日間で得られたデータには、予測されるバックグラウンドを上回るシグナル様の事象の超過は観測されなかった。いわゆる標準的な暗黒物質ハローモデルを仮定すれば、この結果は、DAMAコラボレーションによって観測された年周変化の原因として、WIMPと核子の相互作用を除外する。WIMPとナトリウムとの相互作用断面積の排除限界は、90%の信頼水準で、10 GeV c−2 WIMPに対して1.14 × 10−40 cm2である。COSINE-100実験は、さらに2年にわたってデータを集め続け、これによって、DAMAコラボレーションにより観測された年周変化の、モデルに依存しない検証が可能になると考えられる。

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