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惑星科学:地球と火星の始原的水圏の水の異なる運命

Nature 552, 7685 |  Published: |  doi: 10.1038/nature25031


地球の水は、マントルに活発に輸送されているにもかかわらず、地質時代の大半にわたって表面に存在し続けてきた。しかし火星では、火星の形成直後に表面から水が消失した。火星の水の一部は、火星の磁場が崩壊した後に光分解によって宇宙に散逸したが、火星の地殻が広範に蛇紋岩化していることから、変成加水反応が地殻の分離に重要な役割を果たしたことが示唆される。本論文では、水を含む苦鉄質地殻の埋設や変成作用によって、地球と火星の表面から除去された可能性がある水の相対体積を定量化し、各惑星の圧力と温度が上昇した条件において鉱物転移によって生じるバルク密度の変化を算定した。比較的FeOに富む火星の溶岩の変成鉱物集合体は、構造的に結合した水を地球の変成玄武岩より約25%多く保ち、火星内部深部まで水を保持できる。今回の計算結果から、含水鉱物種を含んでいる可能性があるのは、地球では体積でマントルの約4%であるのに対し、火星では、表面での反応の結果として、体積でマントルの9%を超えることが示唆された。さらに、火星の始原的な含水地殻と進化した含水地殻のいずれも、水を含まない地殻と比べて著しく異なるバルク密度を示しておらず、脱水によって密度のより高い榴輝岩に変化している地球の含水苦鉄質地殻とは対照的である。このことから、スタグナントリッド型のテクトニクス様式で初期火星地殻の効率的なオーバープレーティングや埋設が可能になったと考えられる(この様式では、リソスフェアは単一のテクトニックプレートからなり、温度の高い下部地殻のみがマントル対流に関わる)。これによって、火星水圏の水の重要なシンクとマントルを酸化する機構がもたらされる。これに対して、地球では、比較的浮力の大きな苦鉄質地殻と、より大きな地温勾配によって、地質史の初期に上部マントルが加水される可能性が減り、水が表面近傍に保持されて、複雑な多細胞生物の進化を導く条件が作られた。

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