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構造生物学:HIV-1のエンベロープスパイクの開いた構造と閉じた構造から明らかになったアロステリック性と柔軟性

Nature 547, 7663 doi: 10.1038/nature23010

エンベロープを持つ多くのウイルスは、宿主細胞表面にある受容体への結合を第一段階とする一連の過程を経て、最後には宿主の細胞膜と融合し、遺伝物質を宿主細胞中に送って複製させる。HIVの表面にあるエンベロープ糖タンパク質(Env)三量体は、受容体との結合や融合に重要な役割を担っている。Envは、5か所ある可変領域(V1–V5)やENVの質量のほぼ半分を占めるN-結合型糖鎖付加部位に関しては変異が多くても許容できるが、受容体CD4や補助受容体CXCR4/CCR5の認識に働く部位は保存されていて、ウイルスの適応度に不可欠である。可溶性SOSIP Env三量体は、融合前の天然のウイルス表面に存在するEnvの構造と抗原性を模倣しており、広範囲中和抗体の標的となるので、ワクチン開発によく使われる免疫原となっている。今回我々は、サブタイプBのB41 SOSIP Env三量体がCD4および抗体17bと複合体を形成した状態、もしくは抗体b12と複合体を形成した状態の高分解能低温電子顕微鏡構造を、それぞれ3.7 Åと3.6 Åの分解能で決定した。これらの構造を、B41 SOSIP Env三量体のリガンドと結合していない状態、CD4と結合した状態、CD4結合部位に対する抗体PGV04と結合した状態の再構成電子顕微鏡構造(分解能はそれぞれ5.6 Å、5.2 Å、7.4 Å)と比較した。その結果、CD4–17bの結合により生じる中間体について、我々の知る限りでこれまでで最も詳細に記述することができ、HIV-1の宿主細胞への侵入に必要な、受容体結合が誘発するコンホメーション変化の分子基盤が明らかになった。CD4とb12は共に、gp41サブユニットにこれまで知られていなかった大規模なコンホメーション再編成を引き起こし、融合ペプチドは新たに形成されたポケットに埋没する。これらの構造から、HIV-1のタイプIウイルス融合機構の生物学的機能について、重要な詳細が明らかになり、それに加えて阻害剤設計のための新しい枠組みが得られた。

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