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素粒子物理学:確率加速による反水素の電荷の改善された限界

Nature 529, 7586 doi: 10.1038/nature16491

反物質は、観測可能な宇宙に見かけ上存在しないため、物理学者の興味を引き続けている。現在の理論は、ビッグバン後に等しい量の物質と反物質が現れたことを要請しているが、素粒子物理学の標準模型では、宇宙の半分が見かけ上消失したことを定量的に説明できない。最近、捕獲した反水素原子を調べ、あるかもしれないがまだ観測されてはいない物質と反物質の物理的挙動の差を探索できるようになった。今回我々は、反水素原子の電荷中性を検討した。捕獲した反水素原子を確率加速させて、反水素電荷Qeの実験に基づく限界を|Q| < 0.71 ppb(1標準偏差)と決定した。ここでeは素電荷を表す。この限界は、これまでで最良の反水素電荷の測定結果から決定したものの20分の1未満である。通常の物質の原子と分子の電荷は、H2、He、SF6を含むさまざまな化学種に対して、約10−21e以下であることが分かっている。電荷–パリティ–時間対称性と量子異常の相殺から、反水素の電荷も同様に小さいことが要求される。従って、今回の測定結果は、標準模型の基礎的な側面の改善された限界および検証となっている。電荷重ね合わせを仮定し、反陽子電荷の最良の測定値を使えば、陽電子の電荷異常(陽電子電荷と素電荷の相対的な差)に、現在の最良の測定結果の25分の1の、約1 ppb(1標準偏差)という新しい限界を設定できる。

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