Letter

量子物理学:1.3キロメートル離れた電子スピンによるループホールのないベル不等式破れ

Nature 526, 7575 doi: 10.1038/nature15759

50年以上前、ジョン・ベルは、局所性と実在性だけでは量子論の予測の全てを説明できないことを示した。すなわち、どのような局所実在論でも、遠く離れた粒子に対する測定結果間の相関はある不等式を満たすが、もし粒子が量子力学的にエンタングルしていれば不等式は破れる可能性がある。これまでにベル不等式の検証例は数多く報告されているが、報告された全ての実験で局所実在性との矛盾を生じさせるための余分な仮定が必要であり、そこから「ループホール」が生じた。本論文では、そうした余分な仮定が一切必要ないベル実験を行い、ベル不等式の基礎となる原理を直接検証した。我々は、遠く離れた電子スピン間にロバストなエンタングルメント(評価した状態忠実度は0.92 ± 0.03)を発生できるイベント準備型(event-ready)方式を用いた。効率の良いスピン読み出しにより、公平な標本抽出の仮定(検出ループホール)を回避できる。また、ランダム基底を高速に選択しながら1.3 km離れてスピン読み出しを行うことで、必要とされる局所性条件を保証した。我々はCHSH–ベル不等式(S ≤ 2)を検証するため245回の試行を行い、S = 2.42 ± 0.20を得た(Sは測定結果間の相関を定量化する変数である)。帰無仮説の検証により、空間型分離サイトに対する局所実在論者のモデルで、少なくとも我々が観測した大きさの破れを持つデータが生成できる確率は、装置の記憶を許した場合でさえP = 0.039にすぎない。従って、今回のデータは、局所実在論者の帰無仮説が統計的に有意に棄却されることを示唆している。この結論は、将来の実験でさらに強固になる可能性がある。例えば、P = 0.001の値に到達するには、観測されたS = 2.4を得るため約700回の試行が必要であると思われる。今回の実験を改良すれば、より従来型ではない理論の検証や、装置無依存型量子安全通信、ランダム性検定に用いることができる可能性がある。

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