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幹細胞:ヒトの着床前胚および多能性細胞における内在性レトロウイルスの再活性化

Nature 522, 7555 doi: 10.1038/nature14308

内在性レトロウイルス(ERV)は、太古のレトロウイルス感染の残存物であり、ヒトゲノムの約8%を占めている。一番最近獲得されたヒトERVはHERVK(HML-2)で、これはヒトとチンパンジーの共通祖先の分岐の前後に霊長類系統に繰り返し感染した。HERVKは、他のほとんどのヒトERVとは異なり、レトロウイルスタンパク質をコードする完全なオープンリーディングフレームのコピーを複数個保有している。しかし、HERVKは、生殖細胞腫瘍、黒色腫あるいはヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染などの病的状況がある場合を除いては、宿主により転写サイレンシングされている。今回我々は、一番最近にゲノムに組み込まれたLTR(long terminal repeat)エレメントのDNA低メチル化と、OCT4(別名POU5F1)によるトランス活性化が、相乗的にHERVKの発現を促進することを実証する。それゆえHERVKはヒトの正常な胚発生中に転写され、この転写は8細胞期の胚ゲノム活性化の際に始まり、着床前胚盤胞のエピブラスト細胞の出現の間も続き、胚盤胞を越えて増殖した後ヒト胚性幹細胞が誘導される過程で停止する。特に、ヒト胚盤胞においてHERVKウイルス様粒子とGagタンパク質が検出されたことは重要で、これはヒトの初期発生がレトロウイルス産物の存在下で進行していることを示している。さらに、そのような産物の1つであるHERVKアクセサリータンパク質のRecを多能性細胞株に過剰発現させるだけで、細胞表面のIFITM1レベルを増加させ、ウイルス感染を抑制できることが分かり、これによりHERVKが初期胚細胞でウイルス制限経路を誘導できる機構が少なくとも1つ示唆された。さらに、Recは細胞のRNAの一部に直接結合して、そのリボソーム占有を調節することから、レトロウイルスタンパク質と宿主因子の間の複雑な相互作用がヒトの初期発生経路を微調整し得ることが示された。

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