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医学:ヒトから分離されたA型鳥インフルエンザウイルスH7N9の性状解析

Nature 501, 7468 doi: 10.1038/nature12392

一般的に、A型鳥インフルエンザウイルスはヒトに感染しにくい。しかし、ひとたび、ヒトに感染し、さらにヒトからヒトへ効率よく伝播するようになれば、世界的な大流行(パンデミック)を起こす恐れがある。最近中国において、A型鳥インフルエンザウイルスH7N9(以後、H7N9ウイルスと呼ぶ)のヒトへの感染例が報告された。この感染に関連した死亡率がかなり高いこと(25%を超える)、ヒトからヒトへの感染が疑われる症例があること、またヒトがH7N9ウイルスに対する免疫を持たないことから、事態は深刻である。そこで我々は、流行初期に中国の患者から分離された2種類のH7N9ウイルス、A/Anhui/1/2013 (H7N9)とA/Shanghai/1/2013(H7N9)(以後、それぞれAnhui/1、Shanghai/1と呼ぶ)の性状解析を行った。マウスにおいて、Anhui/1とShanghai/1は、対照として用いた鳥インフルエンザウイルス(A/duck/Gunma/466/2011(H7N9);Dk/GM466)や2009年にパンデミックを起こしたH1N1pdm09ウイルス(A/California/4/2009;CA04)よりも高い病原性を示した。Anhui/1、Shanghai/1、Dk/GM466は、フェレットの鼻甲介でよく増殖した。非ヒト霊長類(カニクイザル)では、Anhui/1とDk/GM466は、感染個体の上気道(鼻甲介や気管)と下気道(肺)で効率よく増殖したが、一般的なヒトインフルエンザウイルスが増殖できるのは通常、感染した霊長類の上気道に限られている。それに対して、ミニブタではAnhui/1を鼻孔内に接種してもあまり増えなかった。また、フェレットモデルを用いて、ウイルスが空気伝播するかどうかを調べたところ、3ペアのうち1ペアで、Anhui/1ウイルスの呼吸器飛沫による伝播が確認された。ウイルスの受容体特異性をグリカンアレイで調べた結果、Anhui/1、Shanghai/1、A/Hangzhou/1/2013(H7N9)(中国でヒトから分離された三番目のヒトA型(H7N9)ウイルス)は、ヒトウイルス型の受容体に結合した。この性質が、ウイルスのフェレット間での伝播に重要な役割を果たしていると考えられる。さらに、マウスを用いた実験で、Anhui/1はノイラミニダーゼ阻害剤に対する感受性がパンデミック2009H1N1ウイルスよりも低かった。それに対して、未認可の抗ウイルス薬であるポリメラーゼ阻害薬はどちらのウイルスの増殖もよく抑制した。Anhui/1ウイルスが、マウス、フェレット、カニクイザルで効率よく増殖すること、またフェレットモデルで限定的な空気伝播を起こすことから、今回、中国でヒトから分離されたH7N9ウイルスはパンデミックを引き起こす可能性があるといえる。

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