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生化学:フェレットへの感染性を持つH5鳥インフルエンザウイルスの受容体への結合

Nature 497, 7449 doi: 10.1038/nature12144

細胞表面受容体へのインフルエンザウイルスの結合は、鳥や動物からヒトへの感染の場合にも、ヒトからヒトへの感染の場合にも、感染性を決める重要な決定因子である。公衆衛生への脅威である高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルスでは、すでにヒト受容体への親和性獲得が観察されており、感染性変異体選択実験によって、ヒトインフルエンザの実験モデルとして広く認められているフェレット間で感染を起こすことのできるウイルスが見つかっている。今回この感染性変異ウイルス由来のヘマグルチニン(赤血球凝集素;HA)について、受容体結合特性の生物物理学的な定量的測定を行い、ヒト受容体に対する親和性がわずかに上昇し、鳥受容体に対する親和性が大きく低下していることが明らかになった。我々はウイルスとHA結合データを解析し、個々のHA–受容体相互作用の親和性(アフィニティー)からウイルスの結合活性(アビディティー)を予測するアルゴリズムを導き出した。そして、この感染性変異ウイルスのヒト受容体に対する選択性は、鳥受容体に対する場合の200倍になることがわかった。受容体類似体と複合体を形成した感染性変異ウイルスHAの結晶構造から、このHAが1918年、1957年、1968年および2009年の世界的大流行を引き起こしたウイルスのHAで見られるのと同様の、折り返したコンホメーションをとってヒト受容体に結合する能力をすでに獲得していることが明らかになった。この結合様式は、非感染性の野生型H5ウイルスのHAがヒト受容体に結合する際の結合様式とは、かなり異なっている。またこの複合体の構造によって、鳥受容体からヒト受容体へという選択性の変化が、226位のGlnのLeuへの置換から生じる仕組みも説明される。この置換により、ヒト受容体に結合しやすくなる一方、鳥受容体への結合が制限されるのである。おそらく、これら2つの特徴は共に、この変異ウイルスの感染性獲得に寄与しているのだろう。

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