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医学:病原性ピコルナウイルスは、細胞膜を乗っ取って、エンベロープを獲得する

Nature 496, 7445 doi: 10.1038/nature12029

動物ウイルスは、脂質二重膜でできたエンベロープの有無によって構造的に大まかに分類されており、エンベロープの有無は安定性、ウイルスの伝播や免疫系による認識に大きく影響するとされている。エンベロープを持たないウイルスに含まれるピコルナウイルス科はプラス鎖型RNAウイルスからなる大きく多様なファミリーで、その中には、古くからあるヒト病原体で現在でも経腸伝播する肝炎の原因になることの多い、A型肝炎ウイルス(HAV)も含まれる。HAVはひそかに感染し、肝臓で効率よく複製する。ウイルス特異的抗体は感染後3〜4週間経ってから初めて出現し、通常はこれが回復の前兆となる。作用機序はまだ解明されていないものの、抗HAV抗体と不活化全粒子ワクチンはどちらも、ウイルス曝露後2週間(肝臓でウイルスの複製が安定して行われるようになる時期)までに投与すれば発病を防ぐことができる。今回我々は、細胞から放出されたHAVは宿主由来の膜に覆われており、そのためウイルス粒子が抗体による中和を免れることを明らかにする。このエンベロープを持つウイルス(「eHAV」)は、エキソソームに似ている。エキソソームは小型の小胞で、細胞間コミュニケーションに重要な役割を持つとの見方が強まっている。このウイルスは完全な感染性を持ち、クロロホルム抽出に感受性を示し、感染患者の血中を循環する。eHAVの発生には、ESCRT(endosomal-sorting complexes required for transport)に結合する宿主タンパク質、すなわちVPS4BとALIXが必要である。HAVは、膜の乗っ取りによって中和抗体から容易に逃れられるようになり、おそらく肝臓内部で広がりやすくなるが、eHAVとして感染後は抗キャプシド抗体によって複製が制限されることから、ウイルス曝露後の投与で病気を防げる理由が示唆される。HAVによる膜の乗っ取りは、「エンベロープを持つ」ウイルス、「エンベロープを持たない」ウイルスという古典的な区別を不明瞭にし、感染細胞からのウイルスの脱出機構や宿主の免疫応答にまで幅広く関わっているのだろう。

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