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神経:プロトカドヘリンは哺乳類神経系での樹状突起の自己忌避にかかわっている

Nature 488, 7412 doi: 10.1038/nature11305

多くのニューロンの樹状突起では、1個のニューロンから生じた突起が互いに反発し合う、自己忌避と呼ばれる現象によって分枝パターンが形成される。自己忌避によって、樹状突起の分枝のすき間や重なり合いが最小限に抑えられ、1個のニューロンの神経突起だけでそのニューロンの担当範囲を完全に覆うことが容易になる。特に、自己忌避が認められるニューロンの一部は、同じサブタイプのほかのニューロンと自由に相互作用しており、これは自己と非自己を区別していることを意味している。今回我々は、クラスター形成したプロトカドヘリン(Pcdh)が、樹状突起の自己忌避と自己/非自己識別にかかわっていることを明らかにする。Pcdh遺伝子座には58個の同族のカドヘリン様膜貫通タンパク質がコードされていて、少なくともその一部は異種細胞でアイソフォーム特異的な同種親和性接着を示し、単一ニューロン中では確率論的にさまざまな組み合わせで発現されている。マウスのγ-サブクラスター(Pcdhg遺伝子)中の22個のPcdh遺伝子すべてを欠失させると、網膜スターバーストアマクリン細胞(SAC)と小脳プルキンエ細胞の樹状突起の自己忌避が起こらなくなる。SACの遺伝子解析を進めたところ、Pcdhgタンパク質は発生の際に細胞自律的に作用することがわかった。22種のPcdhgタンパク質を1種類のアイソフォームに置き換えると自己忌避が回復する。さらに、すべてのSACで1個の同じアイソフォームを発現させると、隣接するSACの樹状突起間での相互作用(異なるニューロン間の相互作用)が減少した。これらの結果は、きょうだい神経突起間でのPcdhgの同種親和性相互作用(同一ニューロン間の相互作用)によって反発シグナルが生じ、自己忌避につながることを示唆している。このモデルでは、異なるニューロン間の相互作用は通常は許容される。それは、同一の細胞体から発する樹状突起でないかぎり、全く一致するPcdhgタンパク質群との遭遇はめったに起こらないからである。これらの結果はさまざまな点で、ショウジョウバエ(Drosophila)のDscam1Down syndrome cell adhesion molecule)について報告されている知見とよく似ている。Dscam1遺伝子にコードされているのは数千種類もの認識分子で、これらの分子は確率論的に発現され、アイソフォーム特異的に相互作用し、自己忌避と自己/非自己の識別に関与する。したがって、昆虫のDscamタンパク質と脊椎動物のPcdhタンパク質にはアミノ酸配列の相同性は全くないものの、ニューロンに分子レベルの異なる識別属性を与えて突起の分枝パターンを誘導するという、類似した戦略の基盤となっているらしい。

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