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生態:生態的機会と性選択を組み合わせることで適応放散が予測される

Nature 487, 7407 doi: 10.1038/nature11144

生物多様性の解明についての根本的な難問の1つは、適応放散を経て多種多様な種へと広範に多様化していく生物種分類群がある一方で、そのように多様化しない分類群も存在する理由を説明することである。外的な環境要因(資源の利用可能性や気候など)および内的な系統特異的形質(行動的形質や形態的形質、遺伝的構造など)は、共に多様化に影響を及ぼすが、そうした要因どうしがどのように相互作用するのかということに取り組んだ研究はほとんどない。アフリカ大湖沼に生息するシクリッドと呼ばれる魚類の放散は、種の多様化を示す際立った例となっている。しかし、アフリカの湖沼に棲むシクリッド系統の大半は適応放散を経ていない。今回我々は、アフリカの46の湖沼に生息するシクリッド類の移住定着および多様化に関するデータを、湖沼の環境的特徴や、定着しているシクリッド系統の形質に関する情報とともにまとめ、適応放散が生じたり生じなかったりする理由を調べた。生態的機会に関連する外的な環境要因および性選択に関連する内的な系統特異的形質が、共にシクリッドが放散するかどうかに強く影響していることが明らかになった。シクリッドが放散を起こしやすいのは、深い湖沼、太陽入射量が大きい地域、および多様化の時間が長かった湖沼である。多様化と湖沼表面積の相関は弱いか、もしくは負の相関になることから、多くの陸生分類群の多様化とは対照的に、シクリッドの種分化は面積による制約を受けないと考えられる。検討した一群の内的形質のうち、性選択の強度の代理指標となる性的二色性には、多様化との正の相関が一貫して認められた。したがって、シクリッドに関しては、生態的機会と性選択が同時に起こることが、適応放散が起こるかどうかを最も的確に予測する。今回の知見は、適応放散は予測可能だが、それは種の形質と環境要因とが同時に検討される場合に限られることを示唆している。

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