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ゲノミクス:機能ゲノミクスによってセリン合成経路が乳がんに不可欠であることが明らかになる

Nature 476, 7360 doi: 10.1038/nature10350

がん細胞は、細胞を急速に成長・増殖させるために、自身の代謝過程を巨大分子生合成の促進に適応させる。RNA干渉(RNAi)に基づく機能喪失によるスクリーニングは、関心の集まる新しいがん標的の同定に有用であることが証明されており、また、in vivoでこの技術を使った最近の研究から、新規の腫瘍抑制因子遺伝子が見つかっている。今回我々は、マウスの同所部位へのヒト乳がん異種移植モデルを用いて、ネガティブ選択型RNAiスクリーニングによる新規がん標的同定法を開発した。この方法を用いて、進行性乳がんや幹細胞性に関連する一連の代謝遺伝子をスクリーニングし、in vivoでの腫瘍形成に必要な遺伝子を同定した。同定された遺伝子の中では、ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)が乳がんで頻繁にコピー数獲得が見られるゲノム領域にあり、PHGDHタンパク質レベルはエストロゲン受容体(ER)陰性乳がんの70 %で上昇している。PHGDHはセリン生合成経路の第一段階を触媒しており、PHGDH発現の高い乳がん細胞ではセリン合成フラックスが増加していた。PHGDH発現の上昇した細胞株でPHGDHを抑制すると、細胞増殖の激減とセリン合成の低下が引き起こされるが、PHGDH発現が上昇していない細胞株ではこのような影響は見られなかった。PHGDHの抑制は、細胞内セリンレベルに影響を与えないが、このセリン合成経路の別の産物でトリカルボン酸(TCA)回路の中間産物でもあるα-ケトグルタル酸レベルの低下を引き起こすことがわかった。PHGDH発現の高い細胞では、TCA回路へのグルタミンの補充反応による全フラックスのおよそ50 %はセリン合成経路が賄っている。これらの結果は、ある種の乳がんはPHGDHの過剰発現によって引き起こされるセリン経路フラックスの増加に依存していることを明らかにし、また、抗がん標的候補を探す際にin vivoネガティブ選択型RNAiスクリーニングが有用であることを証明している。

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