Letter

遺伝:コユビミドリイシのゲノムを用いて環境変化に対するサンゴの応答を解明する

Nature 476, 7360 doi: 10.1038/nature10249

サンゴ礁は生態学的にも経済的にもきわめて重要なものだが、海洋酸性化や海水温上昇など、サンゴ礁の形成で中心となっているイシサンゴ類が直面するさまざまな人為的問題は深刻化しつつある。サンゴの生物学的性質の基盤となっている分子機構を詳細に解明することを目的として、我々は、次世代型シーケンシング技術を使って、コユビミドリイシ(Acropora digitifera)の約4億2,000万塩基のゲノムを解読した。このゲノムには、遺伝子モデルが約2万3,700個含まれている。分子系統解析から、サンゴとイソギンチャク(Nematostella vectensis)との分岐は約5億年前に起こったことが示唆されたが、その年代は、現生サンゴが化石記録に現れる時期(約2億4,000万年前)よりかなり早い。サンゴと褐虫藻の内部共生の進化史は長いが、遺伝子が共生者から宿主に水平伝播したことを示す証拠は認められなかった。しかし、ほかの数種のサンゴとは異なり、コユビミドリイシはシステイン生合成に不可欠な酵素の1つを持たないと考えられ、このサンゴがシステインを共生者に依存していることが示唆された。サンゴは強力な日射に曝露されることが多い環境に生息しているが、コユビミドリイシのゲノムデータの分析結果は、宿主であるサンゴが、強力な紫外線防御物質であるマイコスポリン様アミノ酸を独自にde novo合成する能力を持つことを示している。また、サンゴの自然免疫のレパートリーがイソギンチャクよりずっと複雑であることは、自然免疫にかかわる遺伝子の一部が共生またはコロニー形成性で役割を担っている可能性を示している。石灰化に関与すると推定される遺伝子が複数同定され、その一部はサンゴのみに存在している。今回のサンゴゲノムは、共生の分子基盤および環境変化への応答を理解する土台となる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度