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医学:個々のNotch受容体を標的とする治療抗体

Nature 464, 7291 doi: 10.1038/nature08878

Notchファミリーの4つの受容体は広範に発現している膜貫通タンパク質で、重要な伝達経路として働き、これらを介して哺乳類細胞は情報伝達を行い、細胞の運命と増殖を調節している。リガンドの結合により、受容体の負調節領域(NRR)のコンホメーション変化が誘導され、これにより、不活性なNRR内に埋め込まれていた膜近傍の部位でのプロテアーゼADAMによる切断が可能となる。これに続くγ-セクレターゼ複合体によって触媒される細胞膜内でのタンパク質分解により、細胞内ドメイン(ICD)が切り離され、下流のNotch転写プログラムが始動する。各受容体を介したシグナル伝達の異常は、数々の病気、特にがんとの関連が示されており、Notch経路は創薬の有望なターゲットとなっている。γ-セクレターゼ阻害剤(GSI)は臨床使用へ進んでいるが、GSIは各Notch受容体を区別できず、ほかのシグナル伝達経路を阻害し、またNotch1と2の同時阻害に起因すると考えられる腸毒性を引き起こす。Notch1とNotch2の個々の機能を明らかにし、腸毒性を軽減する臨床使用可能な阻害剤を開発することを目的として、我々はファージディスプレイ法を用いて、非常に特殊な抗体を作製した。これらの抗体は、それぞれの受容体パラログを特異的に阻害し、ヒトとマウスの配列には交差反応するが、ヒトの患者とげっ歯類モデルでNotch1とNotch2の機能を区別できる。今回示す共結晶構造から、この阻害メカニズムがNRRの不活性状態の安定化に依存することがわかった。Notch1を選択的に阻害すると、前臨床モデルにおける腫瘍の増殖は、がん細胞の増殖抑制と血管新生の脱調節という2つの機序によって抑制される。Notch1に加えNotch2も阻害すると重篤な腸毒性が引き起こされるのに対して、どちらかの受容体単独の阻害ではこの副作用が軽減もしくは回避され、全Notch阻害剤と比べて明らかな長所が証明された。本研究は、各々のNotch受容体の分化や疾患への関与を解析する際のパラログ特異的アンタゴニストの価値を強調し、また、Notch1とNotch2を別個に標的とする治療の有望性を明らかにしている。

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