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物理:分子磁性体での量子振動

Nature 453, 7192 doi: 10.1038/nature06962

「分子磁性体」とは一般に、数個の磁性イオンを含み、その結合したスピンが集団スピンSを発生する分子化合物を指す。こうした複雑な多スピン系は、メソスコピックスケールで量子効果を研究する際に魅力あるターゲットとなる。このような分子では、集団スピン状態間の大きいエネルギー障壁は、温度あるいはかける磁場に依存して、熱活性化か量子トンネリングのいずれかで越えることができる。このようなメソスコピックなスピン状態は量子ビット、すなわち量子コンピューターの基本構成ブロックである「キュービット」の分子磁性体による実現に使えるのではないかと期待されている。しかし、このような応用を実用化するには、強いデコヒーレンスを克服しなければならない。本論文では、離散的でよく分離したV15IV磁性クラスターが自己組織化した非磁性環境中に埋め込まれているハイブリッド系における分子磁性体のラビ振動(電磁波に駆動された、光子のコヒーレントな吸収と放出から生じる量子振動)の観測と解析について報告する。各クラスターは15個の反強磁性結合したS = 1/2スピンを含み、それから、S = 1/2の集団基底状態が生じる。この系を共鳴する空洞共振器中に置くと、マイクロ波によって、集団スピン状態の基底状態と励起状態との間に振動的な遷移が引き起こされる。この遷移は長寿命の量子コヒーレンスを示している。今回の量子振動の観測から、(液体ヘリウム温度で)100 µsのオーダーのコヒーレンス時間をもつ低次元の自己組織化キュービットネットワークが実際に可能と考えられる。

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