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細胞:Trp53-/-p16Ink4a-/-p19Arf-/-多能性前駆細胞による長期の造血再構成

Nature 453, 7192 doi: 10.1038/nature06869

造血は階層的系によって維持されており、造血幹細胞(HSC)からまず多能性前駆細胞が生じ、次に、これがあらゆる種類の成熟血液細胞へと分化する。HSCは自己複製能をもつため、その生物の一生にわたって維持される。しかし、多能性前駆細胞は自己複製能をもたないため有糸分裂能と増殖力に限りがあり、一定の回数だけ細胞分裂した後に、最終的には増殖が止まる運命にある。多能性前駆細胞やさらに成熟の進んだ前駆細胞の増殖能力を制限する分子機構は、完全には解明されていない。本論文では、遺伝的にBmi1の下流にある3つの遺伝子、p16Ink4ap19ArfTrp53をもたないマウス(三重変異マウス)由来の骨髄細胞では、長期にわたって血液を再構成できる細胞が約10倍に増えていることを明らかにする。p16Ink4ap19Arfは同一の遺伝子(Cdkn2aとも呼ばれる)の読み枠が異なったもので、別々のタンパク質をコードしている。このような細胞が10倍に増えたのは、野生型マウスの多能性前駆細胞の定義となるc-kit+Sca-1+Flt3+CD150CD48Linという表現型をもつ細胞が長期の再構成能を獲得したことによる。三重変異多能性前駆細胞の増殖因子に対する応答パターンは、野生型多能性前駆細胞に似ているが、野生型HSCには似ていない。これらの結果は、多能性前駆細胞の増殖能力の制限に、p16Ink4a/p19ArfおよびTrp53が中心的役割を果たしていることを明確に示している。がんではこれらの経路が抑制されているのが普通で、初期前駆細胞が自己複製能力を獲得し、さらに発がん性変異を経て悪性転換するという機構が示唆される。

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