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遺伝:オオキツネタケのゲノムから得られる菌根共生についての手がかり

Nature 452, 7183 doi: 10.1038/nature06556

菌根共生、すなわち植物の根と土壌菌との共生関係は、陸上生態系で広くみられ、陸地での植物の定着に重要な役割を果たしてきた可能性がある。北方林(亜寒帯林)、温帯林、山地林はいずれも、外生菌根に依存している。したがって、共生の発達と代謝活性を調節している主な要因が同定されれば、植物の成長と生理に外生菌根が果たしている役割の解明に道が開け、菌根共生の生態系における重要性を十分明らかにできるだろう。今回我々は、担子菌の一種で外生菌根菌であるオオキツネタケ(Laccaria bicolor)のゲノム塩基配列を解読し、根圏定着と共生にかかわる遺伝子群を明らかにする。65メガ塩基のこのゲノムは、タンパク質をコードすると推定される遺伝子約20,000個と非常に多数のトランスポゾン、反復配列を含んでいる。ゲノムには予想外の特徴がみられるが、最も目立ったのは機能不明の一連のエフェクター型低分子分泌タンパク質(SSP)の存在で、その一部は共生組織だけで発現されている。最も発現が盛んなSSPは宿主の根にすみ着いた増殖中の菌糸中に集積している。この外生菌根特有のSSPはおそらく、共生の成立を決定づける役割を果たしているのだろう。意外なことに、オオキツネタケのゲノムには植物細胞の細胞壁の分解にかかわる糖質関連酵素がないが、非植物細胞の細胞壁多糖類を分解する能力は維持されていることから、この菌根菌には腐生栄養と生体栄養という2つの生活様式があり、そのために土壌中でも生きた植物の根の中でも成長できることがわかる。このように、オオキツネタケの推定遺伝子リストは、生体栄養性菌根菌のこれまで知られていなかった共生機構を示している。共生菌は生態系内で植物と相互作用して、持続可能な植物生産性の基礎となる炭素循環、窒素循環に極めて重要な働きをしているが、オオキツネタケのゲノム塩基配列が解読されたことは、こうした過程の理解を深めるためのまたとない機会となるだろう。

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