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宇宙:層状ケイ酸塩の熱力学的性質から明らかになった火星初期の地球化学的環境

Nature 448, 7149 doi: 10.1038/nature05961

液体の水の作用で生成されたように見える地形学的な特徴を示す火星の画像は、生成初期に表面が湿潤な条件にあったことを示す証拠と考えられている。さらに、古いノアキス紀地域に関連して層状ケイ酸塩の大規模な堆積が最近見つかったことは、初期の玄武岩地殻が液体の水によって長期にわたり風化を受けたことを示している。二酸化炭素に富んだ大気による温室効果により、ノアキス紀には火星の表面に液体の水を保つために必要な穏和な気候が維持されていたと考えられている。しかしながら、炭酸塩が見つからないことと二酸化炭素の流出速度が低いことは、火星の初期大気は二酸化炭素濃度が低かったことを示している。本論文では、層状ケイ酸塩の水溶液系における平衡計算から、ノアキス紀の火星表面で支配的だった地球化学的条件を調べた。Fe3+に富んだ層状ケイ酸塩は弱酸性からアルカリ性のpHで沈殿したと考えられる。しかし、こうした環境は、火星で見つかっている硫黄堆積物をもたらした、強酸による風化が支配的なその後の時代の環境とは異なっている。熱力学的計算からは、火星表面の酸化状態は既に高かったことが示され、これは初期に水素が流出したことを裏付けている。また、炭酸塩との平衡から、層状ケイ酸塩の沈殿は二酸化炭素の分圧が非常に低い状態で起きやすいことが示唆される。ノアキス紀の炭酸塩が存在しないらしいことは、初期の酸性条件ではなく、大気中の二酸化炭素濃度が低かったことが原因だった可能性の方が高いと推測される。したがって、火星初期の温暖で湿潤な気候を維持する役割を果たしたのは、他の種類の温室効果ガスだったと考えられる。

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