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量子スピン液体における準粒子の崩壊

Nature 440, 7081 doi: 10.1038/nature04593

現代の凝縮系物理学の多くは素励起あるいは準粒子、すなわちエネルギーと運動量の基本量子によって理解されている。強く相互作用するさまざまな原子系が、弱く相互作用する、あるいはまったく相互作用しない準粒子の集団としてうまく記述できる。しかし、このような記述には興味深い限界が存在し、一部の系では、準粒子の存在そのものが許されない場合がある。不安定な素粒子と同様に準粒子は、保存則によって特定の崩壊チャネルが現れる、ある閾値以上では存在し続けることができない。準粒子のスペクトルはこの閾値で終わる。このような準粒子崩壊の最初の予想は、物質のエキゾチック状態、すなわち絶対零度近くの温度における超流体4He、つまり原子の零点運動が原因となって結晶にならない量子ボーズ液体に対してなされた。本論文では、中性子散乱を用いて、準粒子の破壊は量子磁性体でも起こることを示す。これは、おそらく他のボーズ準粒子の系でも起こっていると思われる。我々は2次元量子磁性体、ピペラジニウムヘキサクロロ二銅酸塩(PHCC)のスピン励起を測定した。ここではスピン1/2銅イオンは非磁性の量子スピン液体を形成し、超流体4Heの励起と極めてよく似たふるまいをすることがわかった。まず準粒子ピークが2体準粒子の連続スペクトルと同化し始める閾値運動量が観測された。それから、ピークは有限のエネルギー幅となり、先端の特異点と識別できなくなる。このため、励起状態はもはや準粒子ではなく、幅広いエネルギーバンドを形成する。今回の発見は、バンド絶縁体から高温超伝導体まで多数の凝縮物質系におけるギャップがあるスペクトルをもつ励起の理解に重要となる。

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