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血液中のトリパノソーマの生存には鞭毛の運動性が必要である

Nature 440, 7081 doi: 10.1038/nature04541

鞭毛や繊毛の9+2構造の微小管軸糸は、真核細胞や真核生物が作る最も代表的な構造の1つである。繊毛や鞭毛には、発生的スケールだけでなく進化的スケールでも、統一性と多様性が共存する。繊毛の一部には運動性があるが、感覚小器官として働くものもあり、9+2や9+0軸糸、そしてそれらに付随した構造をさまざまに備えていることがある。このような統一性と多様性が、分子レパートリーにどのように反映しているかはわかっていない。鞭毛をもつ寄生性原生動物であるトリパノソーマの一種Trypanosoma bruceiはアフリカのサハラ以南に固有であり、ヒトや動物の深刻な疾患の原因となる。アフリカ睡眠病のワクチンができる望みはほとんどなく、近代的な薬物療法が切実に必要とされている。今回我々は、トリパノソーマの鞭毛の詳細なプロテオミクス解析の結果を示す。RNA干渉(RNAi)を用いてこのプロテオームを調べたところ、ヒトの繊毛がかかわる病気についての機能的な手がかりが得られ、血流型トリパノソーマには鞭毛の機能が不可欠であることがわかった。トリパノソーマの鞭毛プロテオーム中で見つかったさまざまなタンパク質をRNAiによって除去すると、血流型のトリパノソーマの細胞質分裂が迅速かつ顕著に起こらなくなり(プロサイクリック型虫体ではそうならない)、鞭毛機能の阻害が病気の抑制手段になる可能性が示唆される。進化的に古いトリパノソーマとヒトを含む他の真核生物とを比較するポストゲノミックメタ解析により、トリパノソーマ特異的鞭毛タンパク質が多数見つかり、これは選択的な介入への道を示している。

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