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生化学:1分子F1-ATPアーゼによる高効率のATP合成

Nature 433, 7027 doi: 10.1038/nature03277

F1-ATPアーゼは、既知のものの中では最小の回転モーターであり、ATPの加水分解反応を利用して反時計方向に回転する。これまでの1分子計測実験から、このモーター分子は3回の加水分解で1回転することが示唆されており、これはその分子構造と一致する。しかし、F1の生理学的役割はATPの合成である。F0F1複合体中では、エネルギー生産性の反応はF1と対になるF0モーターによって駆動される。すなわち、F0がF1を反対方向(時計回り)に回転させることで、ATPが合成される。今回の実験では、1分子操作と微細加工手法を組み合わせて、F1の回転から化学反応への反応共役効率を測定した。F11分子を、体積が数フェムトリットルしかない微小溶液チェンバー中に閉じこめ、磁気ピンセットを用いて時計回りに強制逆回転した。その後、磁場を解除すると、F1分子は合成されたATP量に比例した速度で反時計回りに回転した。10 Hzで強制回転した場合、その機械化学的な共役の効率は、α3β3γ部分複合体(F1)では低かったが、εサブユニットを加えた複合体(F1)では77%にまで達した。これによって、F1は、触媒反応と力学的回転が密接に共役するようにデザインされていることが実証された。さらに今回の結果は、εサブユニットがATP合成に必須の機能を果たしていることを示唆している。

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