グルタミン酸輸送体は膜内在性タンパク質で、既存のイオン勾配を利用してシナプスから細胞内空間への集中的なグルタミン酸取り込みを触媒する。中枢神経系では、正常な発生と機能のためにグルタミン酸輸送体が非常に重要で、脳卒中、癲癇、神経変性疾患などにかかわるとされている。本論文では、真核生物のグルタミン酸輸送体に相同な、嫌気性超好熱古細菌Pyrococcus horikoshii の輸送体の結晶構造を示す。この輸送体はボウル形をした三量体で、細胞の外側に向いたボウルのくぼみには溶媒が入っており、くぼみは膜二重層の半分にまで達している。くぼみの底には3個の独立した結合部位があり、膜の内側と外側から伸びている2本のヘリックスからなるヘアピンがそれぞれの結合部位を支えている。ヘアピンが動くことで膜のどちら側から輸送体に近づけるかが変わり、それによってグルタミン酸の輸送が行われるのだと我々は考える。
目次へ戻る