【プリオン病】ヒトはスクレイピーにかかるのか
Nature Communications
2014年12月17日
Prion diseases: Could scrapie infect humans?
プリオン病は、命にかかわる神経変性疾患で、広範囲の哺乳類種が罹患する。プリオン病の一種であるスクレイピーには、主にヒツジが感染するのだが、今週掲載される論文では、ヒトがスクレイピーに感染する可能性を示した初めての実験的証拠が明らかにされている。
プリオン病の原因は、感染性を有する異常型プリオンタンパク質で、このプリオンが動物に感染すると、その体内の正常なプリオンと相互作用してその構造を変え、体内に蓄積する。プリオンが種間の感染障壁を越えられるかどうかは、宿主のプリオンタンパク質と異常に折り畳まれた感染性プリオン粒子との適合性によって決まる。ヒトのプリオン病として最も一般的なのが孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)で、自然発症性の疾患だと考えられている。ウシが発症するプリオン病であるウシ海綿状脳症(BSE)は、ヒトの変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の原因となっている。スクレイピー・プリオンがヒトに感染するのかどうかは分かっていない。
今回、Olivier Andreolettiたちは、スクレイピー・プリオンの感染能を調べるため、ヒトプリオンタンパク質を発現するように遺伝子操作されたマウスを用いて研究を行った。このマウスモデルは、1996年に英国で変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が流行した際にウシ海綿状脳症のヒトへの感染能を確認するために用いられたものと同じものだ。Andreolettiたちは、ヒツジのスクレイピー・プリオンの一群が、このマウスモデルのうちの数匹に感染し、その効率がウシ海綿状脳症に匹敵することを明らかにした。また、このマウスに数種類のスクレイピー・プリオンを感染させる実験では、ヒトの孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となるプリオンと同じものと考えられるプリオンが増殖した。
以上の研究結果は、スクレイピー・プリオンがヒトに感染する可能性を示唆する一方で、動物のプリオンとヒトのプリオンが関連している可能性に関する問題を新たに提起している。ただし、今回の研究は、ヒトへの感染を直接実証したものではなく、決定的なものとはいえない。従って、動物のプリオンとヒトのプリオンの関連性を確かめるためには、さらなる研究が必要となる。
doi: 10.1038/ncomms6821
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