脳の中の痛み
Nature Neuroscience
2014年10月6日
Pain in the brain
痛みを避けるすべを学習するのに関わる脳の神経回路は、いかに報酬を追求するかについての学習に関わる回路とは別物であるとの研究が、今週のオンライン版に報告されている。この発見は、人において痛みや喜びが学習を形成し、決断を動機付ける仕組みを理解するのに役立つものである。
これまでの研究では、賃金を期待していたよりもたくさんもらうような予期していなかった報酬が脳の特定の神経回路にシグナルを発し、同様の有利な状況を導こうとする行動を強化することが分かっている。
Tor Wagerたちは、被験者に2つの選択肢から選ぶ課題を与えた。その選択の結果とは、さまざまな程度の痛みを伴う熱か、全く痛みがないかの どちらかである。Wagerたちは、機能的脳画像化法と学習のコンピューターモデルを用いて、中脳水道周囲灰白質(PAG)内に存在する領域において、痛みについて予期した量と受け取った量との不一致を知らせるシグナルの基準全てに合致する領域を同定した。PAGは痛みに関して脊髄から直接情報を受け取るが、Wagerたちは同じくPAGが予期する痛みの量について脳の他の領域、例えば腹内側前頭前皮質(期待する報酬のシグナルも出すとされている)からシグナルを受け取っていることを発見した。それに加えてWagerたちは、PAGが中部帯状回皮質という痛みの回避に重要な領域にシグナルを出すことも発見した。
よって、Wagerたちは、経験した痛みの量と予期した痛みの量とをPAGが比較し、脳の他領域がその差異を用いて将来の痛みを伴う行動を妨げることができるとの結論を出している。
doi: 10.1038/nn.3832
注目の論文
-
7月24日
テクノロジー:ブレスレットが手ぶりをコンピューターのコマンドに変換するNature
-
7月24日
古生物学:「トサカ」を持つ爬虫類が羽毛の進化理論を揺るがすNature
-
7月23日
神経科学:COVIDパンデミックが英国の成人の脳の老化を早めることに関連するNature Communications
-
7月22日
社会科学:週4日勤務制が労働者のウェルビーイングを向上させるNature Human Behaviour
-
7月18日
動物の行動:犬のテレビを視聴する習慣は性格によって異なるScientific Reports
-
7月18日
疫学:欧州における鳥インフルエンザ発生の主な予測因子が特定されるScientific Reports