注目の論文

檻に閉じ込められたDNA

Nature Chemistry

2009年2月23日

DNA behind bars

Nature Chemistry(電子版)に発表された研究によると、短い核酸断片は、かご状保護分子の内部に捕捉されると、水中で安定な対構造体を形成しうる。この研究は、塩基対合における疎水効果の重要性を強めるものであり、分子情報処理に影響を及ぼす可能性がある。 通常、そのような短いヌクレオチドは、水中で対合して水素結合二重鎖を形成することはない。しかし、酵素の疎水ポケット内では、二重鎖を形成することが知られている。藤田誠(東京大学大学院工学系研究科)らは、この概念を模倣して、金属イオンで結び付けられた剛体有機分子からかご状分子を合成した。これらの構造体は水溶性であり、疎水性空孔をもつ。その空孔の中で短いモノヌクレオチドやジヌクレオチドが対合して安定な二重鎖を形成する。かご状分子は組み換えが容易な設計なので、異なる構成ブロックを選択することにより、容易に拡張してより大きな核酸を収容できるようになる。 自然界において短いヌクレオチド断片が対合して遺伝情報を伝えるのと同じように、人工かご状分子内での二重鎖形成を利用すれば、分子情報を処理できる新システムが得られるかもしれない。この研究はDNAベースの計算システムのさらなる発展に何らかの手がかりを与えるかもしれないと、J ThomasがNews & Viewsの記事で示唆している。

doi: 10.1038/nchem.100

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