注目の論文
細胞内液の粘度を調べる
Nature Chemistry
2009年3月16日
Looking at cells in sticky situations
死につつある1つの細胞を対象として、細胞内液の粘度変化を測定する分子ローターについて報告する論文が、今週、Nature Chemistry(電子版)に掲載される。このローターを使った測定結果では、細胞が死ぬときに細胞内液の粘度が大幅に上昇することが示されており、このことから、薬物送達研究やがん治療に新たな世界が開けるかもしれない。
光線力学療法では、光増感剤を細胞に添加して細胞内に取り込まれるようにし、そこに光を当てて有毒物質を発生させる。これは、有望ながん治療法の1つであり、その理由としては、光を標的に正しく当てることが可能で、特定の領域内の細胞だけを殺すことができ、それ以外の細胞には影響が及ばない点が挙げられる。
今回、M Kuimova、P Ogilbyらの研究チームは、光増感分子を設計、作製した。この光増感分子は、重要な細胞毒性物質(いわゆる「一重項酸素」)の産生を促進するだけでなく、蛍光発光をモニターすることで細胞の内容物の粘度を測定できる。この研究チームは、粘度の増加率が、毒性物質の形成速度と細胞内のほかの分子との反応速度に影響することを見いだした。この2つの特性は、光線力学療法の効率が関係する重要な要因である。今回の研究によって、細胞内部の拡散動態をモニターするための一般的な方法が示された。この方法を用いることで、シグナル伝達や物質輸送といったほかの細胞過程の解明が進む可能性も考えられる。
doi: 10.1038/nchem.120
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