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SARS-CoV-2:B.1.351、B.1.1.7変異株は抗体による中和に強く抵抗することが実験室で判明した

Nature

2021年3月8日

SARS-CoV-2: B.1.351 and B.1.1.7 variants more resistant to antibody neutralization in the laboratory

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.351変異株(南アフリカ共和国で最初に検出された)とB.1.1.7変異株(英国で最初に検出された)は、抗体による中和に対する抵抗性が高まっていることが実験室での実験によって明らかになった。この知見は、現在の抗体療法とワクチンの効果が、SARS-CoV-2の変異株の一部に対して弱い可能性を示唆している。この研究結果を報告する論文が、Nature に掲載される。

SARS-CoV-2ウイルスの特定部位を標的とするモノクローナル抗体は、病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に用いられているが、この治療薬は、2019年に出現したSARS-CoV-2の最初の変異株に効くように設計されたものだった。

今回、David Hoたちは、30種類のモノクローナル抗体、COVID-19から回復した20人の患者の血漿、ワクチン接種を受けた22人の血清を調べて、これらがSARS-CoV-2の変異株(B.1.351変異株とB.1.1.7変異株)を中和する能力を評価した。その結果、B.1.1.7変異株は、スパイクタンパク質のN末端ドメインを標的とするモノクローナル抗体による中和に対して抵抗性を示し、受容体結合ドメインを標的とする一部の抗体に対する抵抗性は比較的に高かったが、COVID-19から回復した患者の血漿とワクチン接種を受けた患者の血清には抵抗性を示さないことが分かった。Hoたちは、B.1.1.7が現在の治療法やワクチンに顕著な影響を及ぼさないだろうと示唆している。

これに対して、B.1.351変異株は、N末端ドメインを標的とする抗体による中和に抵抗性を示しただけでなく、主にE484Kの変異を原因とするスパイクタンパク質の受容体結合モチーフを標的とする治療に現在使用されているモノクローナル抗体群に対しても抵抗性を示した。また、COVID-19から回復した患者の血漿によるB.1.351の中和活性は約9分の1に減り、ワクチン接種を受けた者の血清による中和活性は約10分の1~12分の1に減った。

ブラジルで発見された変異株(P.1変異株や501Y.V3変異株として知られる)は、B.1.351変異株と同じ複数の重要な変異を有している。このブラジル型変異株は、今回の研究の対象になっていないが、B.1.351変異株に似た抵抗性パターンを示す可能性があるという見解をHoたちは示している。また、Hoたちは、SARS-CoV-2がスパイクタンパク質を標的とした現在の医療介入を回避する方向に変異していると主張している。そうであれば、治療法の修正が必要だろう。このように考慮すべき要因があるということは、緩和措置を一層強化し、ワクチンの本格展開を急ぐことによって、ウイルスの伝播をできるだけ早く止める必要のあることを明確に示していると、Hoたちは結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-021-03398-2

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