注目の論文

生態学:サンゴと関係する藻類の入れ替えがサンゴ白化の回復に役立っている

Nature Communications

2020年12月9日

Ecology: Shifting relationships help corals recover from bleaching

サンゴと共生藻類との関係は、持続的に温暖な水域において白化したサンゴの回復に役立っているが、これは人為的な強い局所的かく乱がない場合に限られることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究は、サンゴの管理と将来の気候変動に対するサンゴの応答の予測に対して重要な意味を持つ可能性がある。

気候変動のために海洋熱波の発生頻度が上昇しており、世界のサンゴ礁にとって深刻な脅威となっている。温暖化によって、サンゴは、その組織内に生息していて栄養を供給している共生藻類を放出してしまう。これが白化を引き起こし、サンゴは、飢餓状態や病気になりやすくなり、死にやすくなる。一部の藻類は、他の藻類よりもサンゴの熱耐性を高めるが、これまでの研究から、白化したサンゴが藻類を取り戻して回復するためには、海水温が正常値に戻る必要のあることが示唆されている。

今回、Julia Baumたちの研究チームは、2015~2016年に熱帯性海洋熱波が発生した際の、太平洋のキリスィマスィ環礁のサンゴを調べた。キリスィマスィ環礁では、一方の端では村やインフラが整備され、もう一方の端ではほとんど人の手が加えられていないという、人為的かく乱の勾配が生じている。熱波が発生する前は、この環礁の「かく乱された」側の水域に生息するサンゴには、組織内に熱耐性の高い共生藻類が生息していたのに対して、それほどかく乱されていない水域のサンゴには、熱感受性の高い共生藻類が生息していた。熱波発生から2か月後では、予想通り、熱耐性の高い共生藻類が支配的なサンゴは、白化する確率が低かった。一方で、熱感受性の高い共生藻類が生息するサンゴの一部は白化したが、海水温が高い間に予想外に回復した。こうした影響は、強い局所的かく乱のない水域でのみ観察されており、かく乱された水域ではこれまで報告されたことがなかった。これは、サンゴが熱感受性の高い共生藻類を放出し、より熱耐性の高い共生藻類種がこれに取って代わったことが原因と考えられる。

今回の研究から、サンゴが長期間の熱波を生き延びる経路は複数存在し、白化に抵抗したり、白化から回復したりできる可能性があり、これらの経路はサンゴと藻類の共生関係によって影響を受けることが示唆された。これらの経路がサンゴと共生藻類の組み合わせと人為的かく乱のパターンの影響をどのように受けるのかを検証することは、将来、長期にわたる熱波が発生した時のサンゴ礁の管理に役立つ可能性がある。

doi: 10.1038/s41467-020-19169-y

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