医学研究:クロロキンとヒドロキシクロロキンの抗ウイルス活性の評価
Nature
2020年7月22日
Medical research: Assessing the antiviral activity of chloroquine and hydroxychloroquine
クロロキンとヒドロキシクロロキンは、マカクザルやヒト肺細胞に感染したSARS-CoV-2に対して顕著な抗ウイルス効果を示さないことを明らかにした2編の論文が、Nature (オンライン版)に掲載された。
ヒドロキシクロロキンとクロロキンは、マラリアの治療に一般的に使用される薬剤で、80件を超える登録臨床試験でCOVID-19を治療する可能性についての調査が行われてきた。この2種類の薬剤は、培養細胞のSARS-CoV-2感染を阻害することが示されているが、COVID-19患者の治療有効性に関しては議論が続いている。
今回、Roger Le Grandたちの研究チームは、ヒトのSARS-CoV-2感染の非ヒト霊長類モデルであるカニクイザルにおけるヒドロキシクロロキン治療の効果を調べた。ヒドロキシクロロキンは、どのような治療開始のタイミング(感染前、感染直後または感染からかなりの時間を経過した時点)でも、十分な抗ウイルス活性を示さなかった。また、ヒドロキシクロロキンと抗生物質アジスロマイシンを併用した場合にもマカクザルのウイルス量に対する顕著な効果は認められなかった。
一方、Stefan Pohlmannたちの研究では、クロロキンがヒト肺細胞に感染したSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を有しないことが分かった。Pohlmannたちは、これまでの実験でクロロキンの有効性を実証するために用いられた細胞には、肺細胞に通常存在していてSARS-CoV-2のヒト肺細胞への侵入を容易にする酵素がなかったと説明している。Pohlmannたちは、SARS-CoV-2に対する薬物の活性を評価する研究において、肺組織を模倣した細胞株を使用することの重要性を強調している。
この2つの研究結果をまとめると、COVID-19患者の治療にヒドロキシクロロキンとクロロキンを使用することは支持されないということになる。
doi: 10.1038/s41586-020-2575-3
注目の論文
-
9月12日
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
9月12日
動物学:タコはあらゆる作業に最適な腕を前面に出すScientific Reports
-
9月11日
古生物学:トカゲのような生物の起源をさらに遡るNature
-
9月11日
環境:2023年のカナダ山火事の長期的な影響を評価するNature
-
9月10日
健康:大麻の使用は女性の生殖能力に影響を与えるかもしれないNature Communications
-
9月9日
気候変動:気温の上昇が添加糖の消費量の増加と関連しているNature Climate Change