生態学:英国本土における鳥類個体群の多様性に道路への曝露が関係している
Nature Communications
2020年7月8日
Ecology: Road exposure linked to variation in bird populations in Great Britain
英国のグレートブリテン島とその周辺の小島に生息する比較的希少な小型の鳥類種や渡り鳥種(マキバタヒバリ、タゲリなど)が、道路への曝露と負の関連を示していることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究は、同島内の道路網が、ありふれた鳥類種(ミヤマガラス、クロウタドリ、コマドリなど)に恩恵をもたらす一方で、その他の鳥類種の不利になる環境条件を生み出しており、鳥類群集の単純化をもたらしている可能性を示唆している。
英国の道路網は、世界で最も密に張り巡らされた道路網の1つで、国土の80%が道路から1キロメートル以内にある。道路建設は、それぞれの地域で生息地の分断化や変化をもたらし、野生生物の地域個体群に影響を及ぼしている。しかし、野生生物の個体群に対する道路の影響を全国レベルで調べる研究は、ほとんど進んでいない。
今回、Sophia Cookeたちの研究チームは、英国鳥類繁殖調査(UK Breeding Bird Survey)のデータを使って、グレートブリテン島内の道路と関連付けて、同島内に生息する鳥類75種の個体数評価を行った。その結果、58種の個体数と道路曝露との間に有意な関連が認められ、そのうち33種が負の影響を受けていることが明らかになった。道路への曝露が増えると、英国内で個体数の少ない鳥類種の個体数が減り、ありふれた鳥類種の個体数が増えていた。例えば、道路曝露を考慮に入れると、マキバタヒバリの個体数は31%減少し、ウソの個体数は28%増加していた。また、幹線道路と補助道路を別々に分析したところ、幹線道路近くで発見された鳥類種の81%が負の影響を受けていることが判明した。
Cookeたちは、脆弱な鳥類種が道路密度の低い地域へ追いやられており、このことが将来的には道路密度の高い国々での鳥類の個体数減少と絶滅につながると考えられると主張している。
doi: 10.1038/s41467-020-16899-x
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