注目の論文

【遺伝学】実験用マウスに適用される遺伝子ドライブの開発

Nature

2019年1月24日

Genetics: Successful gene drive developed in lab mice

遺伝子ドライブの実現可能性を実験用マウスを使って実証したことを報告する論文が、今週掲載される。遺伝子ドライブは、ある集団内で特定の遺伝子バリアント(対立遺伝子)の継承率を高めるための方法だ。野生マウスの個体数を管理する方法として遺伝子ドライブを用いるためには、さらなる研究が必要だが、今回の結果は、複雑な遺伝性疾患の研究に用いるマウスモデルの改良版の開発に役立つ可能性がある。

遺伝子ドライブは、特定の対立遺伝子の伝達に偏りを生じさせて、その対立遺伝子が継承される頻度を無作為な分配の場合よりも高くする、いわゆる「超メンデル的遺伝」を引き起こす。最近、昆虫に適用される高効率の遺伝子ドライブ(例えば、特定の蚊の個体数を減らすことを目的とするもの)が開発されているが、哺乳類の場合には遺伝的継承の機構が多様であるため、遺伝子ドライブ系の開発が成功していない。

今回Kimberly Cooperたちは、雌の実験用マウスに用いる遺伝子ドライブ系の開発に成功した。Cooperたちは、CRISPR-Cas9法を用いて、配偶子形成と胚発生のさまざまな段階でゲノム編集を行って遺伝子伝播の最適化を図り、チロシナーゼ(Tyr)遺伝子の特定の改変対立遺伝子がマウスの親から子へ継承される確率を高めた。この遺伝子ドライブ系は、雄の生殖系列ではうまくいかなかったが、雌の生殖系列を標的とした場合には、Tyr遺伝子の対立遺伝子の継承率を上昇させた。Cooperたちは、今回の研究で検証された遺伝子ドライブ系のうち最も効率の高いものであれば、必要な単一の対立遺伝子の継承率を平均で50%から約70%に上昇させることができると報告している。

Cooperたちは、雄雌両方のマウスの仔における遺伝子継承の頻度を高めるにはさらなる研究が必要だが、今回の研究で達成された効率は広範な実験的用途にとって十分だと結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-019-0875-2

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