【遺伝学】男性の性的指向と遺伝的要因との関連を探索する
Scientific Reports
2017年12月8日
Genetics: Looking for genetic links to male sexual orientation
男性の性的指向に関する予備的な全ゲノム関連解析(GWAS)の結果を報告する論文が、今週掲載される。今回の解析により得られた知見からは、性的指向に関連した機能を持つ可能性のある遺伝子の近くに遺伝的多型が存在していることが示唆されるが、論文著者は、この遺伝的多型と性的指向との関連は推測の域を超えないと指摘している。
男性の性的指向には多くの要因が関係しており、複数の遺伝的要因と環境的要因に関する証拠が得られている。しかし、男性の性的指向に関する遺伝的関連研究の数は少なかった。
今回、Alan Sandersたちの研究グループは、主にヨーロッパ系の男性同性愛者1077人と男性異性愛者1231人を対象として、男性の性的指向に関するGWASを実施した。その結果、一塩基多型(DNAの塩基配列中の1つの塩基が異なっている箇所)が含まれる領域がいくつか検出された。その中で最も有意性の高い領域は、13番染色体と14番染色体の遺伝子の近くに位置しており、これらの遺伝子には性的指向の発達に関連した機能があると考えるのが妥当だとされる。
13番染色体上で最も強く関連する領域は、SLITRK6遺伝子とSLITRK5遺伝子の間に位置していた。SLITRK6遺伝子は、神経発達遺伝子で、その大部分が間脳という脳部位で発現する。男性の間脳には、性的指向に応じて大きさの異なる領域が存在するという研究報告が過去に発表されている。14番染色体で最も有意性の高い一塩基多型とその周辺の領域はTSHR(甲状腺刺激ホルモン受容体)遺伝子に対応しており、この遺伝子のバリアントが、非定型的な甲状腺機能と男性同性愛が関連しているとした過去の研究知見を説明する上で役立つことが予想される。
Sandersたちは、遺伝的性質の複雑な形質に関するサンプルサイズが小さいことと解析対象が単一の祖先集団(ヨーロッパ系)に限定されたことが今回の研究の限界だと指摘した上で、13番、14番染色体で検出された最も顕著な関連のピークは、それらに最も近い位置にある興味深い遺伝子の一例で、形質関連遺伝子であるかもしれないが、そうした関連は仮説にすぎないと指摘している。
doi: 10.1038/s41598-017-15736-4
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