食物の価値をそれぞれの成分の価値の合計としてとらえる
Nature Neuroscience
2017年10月24日
Food as the sum of its parts
食品の栄養素に関する我々の個人的信念が特定の脳領域に表現されており、この個人的信念を用いて食品の個人的価値を計算できることを報告する論文が、今週掲載される。
眼窩前頭皮質(OFC)という脳領域は、我々が複数の選択肢から1つに決める必要がある場合に報酬(例えば、食物、金銭、消費財、楽しい活動)の予想価値が表現されると考えられている。しかし、こうした「価値信号」が脳内にどのように組み込まれているのかについては解明されていない。
今回、鈴木真介(すずき・しんすけ)たちの研究グループは、食物報酬の価値評価に着目し、23人の被験者が参加する実験を行い、提示された食品に対して支払いたいと思う金額(被験者にとっての食品の個人的価値の代理指標)を自己申告させて、その際の神経活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によって測定した。fMRIで測定した後、被験者は、それぞれの食品に含まれる脂質、ナトリウム、炭水化物、砂糖、タンパク質、ビタミンの推定量と推定カロリー量を申告した。
鈴木たちは、被験者にとっての食品の個人的価値が、食品成分の客観的な含有量やカロリー量の客観的な推定値ではなく、その食品に含まれる脂質と炭水化物、タンパク質、ビタミンの量に関する信念によって最も正確に予測できることを明らかにした。食物の全般的な個人的価値は、内側OFCと外側OFCに表現されていたが、脂質と炭水化物、タンパク質、ビタミンの量に関する個人的信念の神経表現は、外側OFCだけに位置していた。それぞれの成分は、外側OFC内でのそれぞれ異なる活動パターンによって表現され、この活動パターンは、被験者が食品に対する支払額を提示する前に食品を見て、その価値を決める際に特異的に観測された。この「価値評価」期に内側OFCと4つの主観的食品成分のそれぞれをコードした外側OFCの亜領域の接続が強化されたことも今回明らかになったが、このことは、内側OFCが外側OFCからの成分特異的な信号を統合して、食品の主観的価値を計算している可能性を示唆している。
doi: 10.1038/s41593-017-0008-x
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