【ゲノミクス】ジカウイルスのゲノムから明らかになった近年のアメリカ大陸での感染拡大経路
Nature
2017年5月25日
Genomics: Genomes chart Zika’s recent spread in the Americas
ジカウイルスのゲノム塩基配列(約200点)が新たに解読、解析されたことを報告する3編の論文が、今週掲載される。これらのゲノムは、ジカウイルスに感染した患者とネッタイシマカ(Aedes aegypti)に由来するもので、現在のアメリカ大陸におけるジカウイルスの出現と流行拡大に関する詳しい知見をもたらしている。
近年のアメリカ大陸におけるジカウイルス(ZIKV)の流行は大きな注目を集めたが、ジカウイルスの疫学特性と進化は、ゲノムデータの不足などの理由により解明が進んでいない。ジカウイルスのゲノムの解読と解析は、臨床検体のウイルス量が少ないために技術的難度の高い課題となっている。
今回、Kristian Andersenたちの研究グループは、ジカウイルスが米国本土に持ち込まれた経路と時期の解明を進めるため、ジカウイルスに感染した患者と蚊から採取した39点の新たなジカウイルスのゲノム塩基配列の解読、解析を行った。Andersenたちは、ジカウイルスがフロリダ州マイアミで初めて検出されて以降のウイルス発生を追跡調査した。そして、Andersenたちの系統発生解析によれば、ジカウイルスはフロリダに少なくとも4回持ち込まれており、その大半は、カリブ海沿岸諸国からの旅行者と関連していることが明らかになった。また、Andersenたちは、ジカウイルスの上陸に対して特に脆弱なフロリダ州南部の特定の地域についても説明している。
一方、Oliver Pybusたちの研究グループとPardis Sabetiたちの研究グループは、ブラジルとアメリカ大陸におけるジカウイルスの感染拡大を再現し、2013年後半または2014年前半にブラジル北東部に蔓延していたことが示唆されている。Pybusたちの論文では、54点の新たなジカウイルスのゲノムについて報告している。そのほとんどはブラジル北東部で採取したものであり、そのうちの数点については、携帯型DNAシーケンサーと移動式のゲノミクス実験室を使ってリアルタイムでゲノム塩基配列の解読・解析が行われた。その結果、ブラジル北東部が、アメリカ大陸全土でのジカウイルス流行の定着と拡大に極めて重要な役割を果たしていることが分かった。Sabetiたちの論文では、10か国で収集された110点のジカウイルスのゲノムについて解読、解析が行われたことが報告されている。Sabetiたちもブラジル国内でジカウイルスの流行が急速に広がり、他の地理的地域への侵入が複数回あったという観察結果を明らかにしている。また、Sabetiたちは、現在も続くジカウイルスの進化について説明し、変異データの蓄積が将来的な診断検査の性能に与える影響についても論じている。
これら3編の論文の全てで、ジカウイルス感染が見つかるまでの何か月もの間、このウイルスが検出されずに蔓延していたことが明らかになっている。「これらの論文と今年のエボラに関する報告書によって、ほぼリアルタイムという非常に興味深い状態で疾患の流行を調べ、強力な計算的枠組みの中で解析されたゲノム塩基配列を迅速に入手することで実現される成果という点で新たな基準が打ち立てられた」と同時掲載のMichael WorobeyのNews & Views記事で結論づけられている。
さらにNicholas Lomanたちの研究グループは、ジカウイルスのゲノム塩基配列の解読・解析を臨床検体から直接行い、単離、培養を必要としないという方法について記述した論文をNature Protocolsに発表する。この方法は、ウイルスが流行している現地で携帯型シーケンサーを用いて、その流行に由来するRNAウイルスやDNAウイルスのゲノム塩基配列の解読・解析を行うための方法や実験室環境で使用する低コストで便利な方法としても適している。
doi: 10.1038/nature22400
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