注目の論文
【遺伝】学歴に関連する遺伝的変異の解明
Nature
2016年5月12日
Genetics: Learning about genetic variations associated with educational attainment
このほど約30万人を対象とした全ゲノム関連解析(GWAS)が新たに実施され、正規の教育課程の修業年限の個人差に関連する遺伝的変異が同定された。この新知見を発表する論文が、今週掲載される。
学歴(「学校教育の修業年限」と定義される)は社会的要因と環境的要因に強く影響されているが、学歴の高低の個人差に遺伝的要因の影響も見られることが過去の数々の研究で明らかになっていた。
今回、Philipp Koellingerたちは、ヨーロッパ系の人々(293,723人)について30歳以上の時点での学歴を評価した上でGWASを実施した結果を報告している。これは、同じ研究グループによる約10万人を対象とした前回の研究をさらに拡大させたもので、英国バイオバンクが公表した約11万人のデータも活用されている。その結果、学歴に関連する74の遺伝的変異が見つかった。そして、こうした変異領域において、特に出生前の時期に神経組織で選択的に発現し、神経の発生に関係する生物学的経路で多く発現している候補遺伝子が同定された。
こうした遺伝的関連性によって説明できるのは、学歴の個人差のうちのわずかな部分であり、学歴が主として環境的要因に依存している点をKoellingerたちは強調している。それでも、今回の研究結果では、今後の研究で利用できる候補遺伝子や候補経路が明らかになった。
doi: 10.1038/nature17671
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