注目の論文

帝王切開分娩児を母親の腟内微生物へ曝露することの効果

Nature Medicine

2016年2月2日

Exposing C-section-delivered babies to vaginal microbes

帝王切開によって生まれた新生児を出生時に母親の膣液に曝露すると、経腟分娩で生まれた新生児とよく似た微生物相(ヒトの体に生息している微生物集団)が発達することが明らかになった。分娩の方法は、新生児の微生物相を決定する大きな要因の1つだが、この予備研究は、帝王切開によって生まれた新生児で腟内微生物相の部分的復元が可能であることを示している。

膣液中に存在する微生物は、新生児の出生の際に皮膚や口腔、消化管に定着し、これらが集まって微生物相を形成する。出生後の早い段階でのこのような微生物への曝露と微生物の定着は免疫系の発達に影響を与え、それ以降の代謝や免疫機能を大きく左右する。帝王切開分娩児は、国によっては新生児の50%を超えるが、この方法で生まれた新生児は出生直後に腟内微生物に曝露されることがなく、出生時の微生物相は経膣分娩で生まれた子とは異なっている。

M Dominguez-Bello、J Clementeたちのグループは、腟内微生物移行(vaginal microbial transfer)と名付けた方法について報告している。出産に先立って4人の母親の腟内にガーゼを1時間入れておき、帝王切開による分娩の直後に、新生児をそれぞれの母親からのガーゼで拭って膣液を塗りつけた。その後、この4人の新生児の微生物相を、膣液曝露を行わなかった7人の帝王切開分娩児および7人の経膣分娩児と比較した。出生後30日の時点で、膣液曝露を行った帝王切開分娩児の微生物相は、曝露を行わなかった帝王切開分娩児の微生物相よりも、経膣分娩児の微生物相の方に似ていた。

しかし、この方法による腟内微生物の移行は完全ではなく、経膣分娩で生まれた新生児に存在する微生物が完全には移行されていないことが分かった。またこれらの新生児について、長期的な臨床経過は調べられていないし、腟内微生物への曝露が微生物相の構成や新生児の健康状態に対して何らかの長期的影響をもたらすのかどうかもまだ分からない。

A Khorutsは同時掲載のNews & Viewsで、この論文の著者たちは「共生相手として一生にわたって健康的な関係を築けるような微生物群の新生児への導入を促進する積極的な介入方法の開発に向かう最初の重要な一歩」と評しているが、実験数の少なさや研究期間の短さといった限界があることも指摘している。

doi: 10.1038/nm.4039

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