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The Global Grants for Gut Health

Royaltystockphoto/iStock/Getty

The Global Grants for Gut Health
2019年助成者インタビュー

ヒト腸内細菌叢についての画期的研究をサポート

好奇心を称える

腸内細菌叢の長期的進化および薬剤と腸内細菌叢の相互作用を研究する、極めて競争力の高い2つのプロジェクトを発表する。

原文:Celebrating curiosity

2018年、「Global Grants for Gut Health」の第1回のプロジェクト募集が発表された。ヤクルトとネイチャー・リサーチが共同で、ヒト腸内細菌叢に関する研究者主導の研究を支援するプログラムだ。197人の応募者から晴れて選ばれた2人の助成者をここで紹介する。

1人目は、ポルトガルのグルベンキアン科学研究所のイザベル・ゴルド(Isabel Gordo)で、助成の対象となるプロジェクトは「腸内細菌叢における共生菌の生体内での長期的進化」。ゴルドは進化生物学研究室を率いており、理論的研究と実証的研究を組み合わせて、微生物個体群における変異を生み出す主要な力を理解することを目指している。腸内環境における共生細菌の進化は解明が始まったばかりで、興味深くも理解の進んでいない分野だ。提案されたプロジェクトは、シンプルだが的確なマウスの実験系を用いることで、固有細菌と侵入細菌を追跡してさまざまな時点で調べることができる。この研究は、腸内恒常性の維持や多様性の生成など、腸内エコシステムを理解する上できわめて重要な基本的問題に光を当てると期待される。

2人目は、アイルランドにあるコーク大学のニール・ハイランド(Niall Hyland)で、「薬剤と腸内細菌叢の相互作用:精神医学における個別化医療への道を拓く」というプロジェクトを提案した。腸内細菌叢が、薬剤を直接代謝するか、あるいは宿主の薬剤代謝を変化させることによって、さまざまな薬剤の作用に影響を及ぼしていることを示す証拠が集まりつつある。ハイランドらは、うつ病関連の腸内毒素症が数種類の関連薬剤に及ぼす効果を予測するため、マルチオミクス、酵素と薬物動態データ、細菌叢の特徴に基づく個別化アプローチを開発することを目指している。その成果は、治療の有効性を高め、患者と薬剤の適合性を向上させる可能性がある。薬物代謝における腸内細菌の役割を理解することは、個別化医療につながる重要な道を切り開くだろう。

審査委員会は、プロジェクトのアイデアとアプローチの独自性、提案の重要度と科学的な質、ならびに提案された研究に関する応募者の適格性に基づいて、これら2つのプロジェクトを選定した。

個人的な見解だが、科学を前進させる際のキーワードは好奇心であると思う。これら2つの提案に通底する原動力も、まさにその好奇心だ。他の多くの応募も、腸内細菌叢と健康の相互作用におけるきわめて基本的な大きな問題に大胆かつ独創的に挑んでいた。選考プロセスは容易ではなく、また、予想を大きく上回る応募があった。優れたアイデアと才能ある人材は世にあふれている。

時間と労力を割いていただいた審査委員のエラン・エリナフ(Eran Elinav)、ポール・W・オトゥール(Paul W. O’Toole)、カレン・P・スコット(Karen P. Scott)、竹田潔、趙立平(Liping Zhao)の各氏に、ヤクルトおよびネイチャー・リサーチとともに、心よりお礼を申しあげる。細菌叢科学の将来に興奮を覚えるとともに、2つの優れたアイデアの実現を手助けする機会を持てたことを光栄に思う。

ティナ・ラスク・リヒト(Tine Rask Licht)
「Global Grants for Gut Health」
審査委員長


大腸菌の生体内での進化を探る

腸内細菌叢の組成全体を調べてきた生物学者のイザベル・ゴルドは「The Global Grants for Gut Health」助成金を用いて、生体内における1つの一般的な腸内細菌の進化の経路を探る。大腸菌の進化だ。

原文:Evolutionary insights into E. Coli

イザベル・ゴルド(Isabel Gordo)

イザベル・ゴルド(Isabel Gordo)

ゴルドは細菌のゲノムの進化に強い関心を持つ進化生物学者。2004年から、ポルトガルのリスボン近郊にあるグルベンキアン科学研究所の独立主任研究員を務め、進化生物学研究室を率いている。ゴルドのチームは生態学的環境における細菌の適応プロセスを研究しており、哺乳動物の腸内細菌叢エコシステムのモデルマウスを作製した。ゴルドは抗菌薬耐性を生成・調節している細菌種内および細菌種間の相互作用に強い関心があり、抗菌薬耐性を抑えるための新戦略の設計を目指している。

研究の背景について教えてください。

ゴルド: 腸内細菌叢における細菌種の多様性については多くのことがわかっています。しかし、個々の細菌種内の遺伝的多様性についてはほとんど未知です。それがわかれば、細菌種の進化のほか、例えば細菌種が抗菌薬治療をかわすために用いている戦略や、ある細菌種がどのようにして病原性を獲得して病気を引き起こすようになるのかに関して貴重な知見が得られるでしょう。単一の細菌種における進化の探求は、聡明な進化生物学者リチャード・レンスキー(Richard Lenski)が先鞭をつけました。私がこの分野を志したのはレンスキーの研究がきっかけでした。一般的な腸内細菌である大腸菌をミシガン州立大学の研究室のフラスコの中で育てて30年間にわたってその進化を観察するという、いまや有名になった彼の実験は並外れたものです。この画期的研究から学ぶことは非常に多いと思います。

今回の助成金を活用するあなたの新プロジェクトは、この分野に何をもたらすでしょうか。

ゴルド: 個々の細菌種が生体内、つまり生き物の腸内でどのように進化しているか、どれくらい速く進化しているかは、まだわかっていません。私たちはこれを探るために、新たに開発したモデルマウスを用いる計画です。大腸菌がどれくらい速く進化するか、できるだけ正確に定量化したいと考えており、この進化プロセスをリアルタイムで調べます。これによって、単一の腸内細菌種の進化のダイナミクスと個体群の多様性をより正確に把握できるでしょう。腸内細菌叢中の1つの種だけに的を絞るのは珍しく、過去数年間に私たちが築いてきた基礎がこれを達成する助けとなるでしょう。

細菌叢の中の1種だけに的を絞るのは珍しい

大腸菌の進化について詳しく知るうえでマウスはどう役立ちますか。

ゴルド: 私たちは先ごろ、腸内細菌叢を調べるという目的に特化したモデルマウスを作製しました。これまでの研究プロジェクトで有益なデータをすでにもたらしてくれているので、有用性は確かです。このモデルマウスのゲノム構成は十分にコントロールされており、どのマウスも遺伝的に同一です。同じ餌を与えられ、同色の蛍光標識でマークしたヒト由来の大腸菌株が同じ時点で移植されます。蛍光を目印に、この大腸菌個体群を腸内で容易に追跡できます。一方、マウスはもともと腸内に大腸菌株を持っています。もとからいた菌株と移植された菌株の両方に注目し、両者がどのように競合し進化するかを各マウスの一生にわたって観察します。

なぜ大腸菌に的を絞ることにしたのですか。

ゴルド: 大腸菌はゲノム構成や代謝を含め多くのことがわかっているため、研究対象として最適です。つまり、新たな変異や変化が生じるたびにそれを特定して追跡できるのです。また増殖が速く、マウスの腸内で1~2時間ごとに新世代を生み出すことができます。つまり数カ月あれば、異なる大腸菌株が併存しながら数千世代にわたって進化する様子を明確につかめると期待できます。

どんな発見を期待していますか。

ゴルド: 細菌が新たな環境に入るとき、細菌にかかる主なプレッシャーは2つあります。1つはそこにすでに存在している細胞と一緒に生きていくためにどう適応するか、もう1つは、抗菌薬など自分の生存を脅かす難題を切り抜けるためにどう進化するかです。私たちは大腸菌の適応ぶりを観察して、こうした進化的変化が新世代にどんな利点をもたらすかを見極める計画です。

移植した細菌のほうがもとからいた菌株よりも素早く進化すると予想されます。固有菌株がすでにその環境に慣れているのに対し、移植菌株はその新たな環境に適応する必要があるからです。私たちは、移植された大腸菌株が適応を重ねる速度を調べ、その速度がマウスの生存中ずっと一定なのか、それとも適応反応が時間とともに鈍るのかを探る計画です。特に関心があるのは遺伝子の水平伝播、つまり在来菌株と移植菌株の間で遺伝物質が共有される可能性です。他よりも素早く進化できるクローンを見つけることや、それらのクローンが大腸菌個体群の回復力にどんな波及効果を及ぼすかにも関心があります。こうした詳細は、病気の進行に内在するメカニズムや、微生物がどのように薬剤耐性を獲得するのかについて貴重な知見をもたらすでしょう。

「Global Grants for Gut Health」に応募した理由は?

ゴルド: 私は数年前にヤクルトがブラジルで主催した会議で講演したので、ヤクルトの支援による優れた研究のことはすでによく知っていました。私たちのチームは助成対象募集をソーシャルメディアで見て、「ああ、これこそ待ち望んでいたものだ!」と思いました。セレンディピティを得た感じです。そして、チームの総力を集めて応募しました。生化学者のドゥラン(Paulo Jorge Rêgo Durão)、進化生物学者のラミーロ(Ricardo Ramiro)、微生物遺伝学者のフラザン(Nelson Frazão)です。アイデアを出し合い、一緒に応募書類を書き、信望ある研究者仲間の意見を聞いて仕上げました。これは私たちの助成金獲得成功に大きな役割を果たしたと思います。私たちは完全に仕上がったコンセプトを持ち、このプロジェクトで自分たちが設定した目標をチームとして達成可能であることを示すため、同分野における私たちの先行研究の結果を提示しました。この助成を与えられたことは私たちにとって大きな意味があり、腸内細菌叢研究というこの新分野で私たちのモデルマウスが貴重な資産になると強く確信しています。

大腸菌の進化を探る研究チームのメンバー。左からラミーロ(Ricardo Ramiro)、ギュレレシ(Daniela Güleresi)、フラザン(Nelson Frazão)、ドゥラン(Paulo Jorge Rêgo Durão)、ゴルド(Isabel Gordo)。

最後に、余暇はどんなふうに過ごすのがお好きですか。

ゴルド: 家族、特にティーンエイジの娘と一緒に過ごすのが大好きです。お気に入りのスポーツはテニス。定期的にプレイを楽しんでおり、国際マッチを観戦するのも好きです。毎年この時期(6月)は全仏オープンやウィンブルドンなどのビッグトーナメントがあって最高ですね。気が散って実験室でマウスを観察できなくなりそうだけど!


うつ病期における薬物代謝を腸内細菌に探る

消化管を研究してきた薬理学者で生理学上級講師のニール・ハイランドは「Global Grants for Gut Health」助成金を用いて、抗うつ薬や抗精神病薬を代謝する能力に腸内細菌叢がどう影響するかを調べる。

原文:Gut feeling about drug metabolism during depression

ニール・ハイランド(Niall Hyland)

ニール・ハイランド(Niall Hyland)

ハイランドはコーク大学の生理学科の上級講師および同大学APCマイクロバイオーム・アイルランドの教職員を務めている。キャリアの初期に薬理学の博士号を取得し、米国のルイジアナおよびポスドク研究者としてカナダのカルガリーで過ごした後、2007年にアイルランドへ戻り、APCマイクロバイオーム・アイルランドに加わった。コークへ戻ったのを機に、腸脳相関疾患である過敏性腸症候群(IBS)に研究の主な焦点を定めた。これが、精神疾患における薬物代謝に腸内細菌叢が及ぼす影響を調べるための強固な基盤となっている。

細菌叢研究に携わるようになったきっかけは?

ハイランド: ヒトの腸内細菌叢が多くの生理学研究の焦点となったのは、ここ20年ほどのことです。これらの微生物が人間の健康に様々な形で好影響と悪影響の両方を与えているらしいことがわかってきました。近年、専門家は腸内細菌叢と薬剤の相互作用を探り始めています。薬剤への反応は人によって異なりますが、身体による薬剤の吸収・代謝の仕方に各人の腸内細菌叢が重要な役割を果たしている可能性があるようです。私はもともと薬理学者なので、大きな関心を持ってこの分野の新研究を追ってきました。私たちのチームはそれらの知見に刺激され、「うつ病は腸内細菌叢に波及効果を及ぼして腸関連の疾患を生じさせうるか、うつ病は抗うつ薬や抗精神病薬を処理する能力にどう影響を及ぼしうるか」という疑問を抱くようになりました。ちょうどそんなころに「Global Grants for Gut Health」の助成対象募集を見つけたのです。

腸と脳は解剖学的には離れているが、生理学的には密接につながっている。そのつながりに介在しているのが腸内細菌叢だ。

Catherine Buckley

「Global Grants for Gut Health」助成金に応募する決め手となったのは?

ハイランド: 応募手続きがきわめて単純明快でしたし、募集内容が広範かつフレキシブルで学際的な提案で応募できる点も幸いでした。要するに素晴らしい概念実証研究助成プログラムであり、大規模なプロジェクトに着手して有望な結果を達成するチャンスを研究者に与えてくれます。助成金を獲得すれば、この重要なトピックの研究にただちに弾みがつき、一緒に1年間プロジェクトに専念してくれる研究者を雇うとともに、私たち学際チームの活動が可能になります。そのメンバーは精神医学および神経行動科学講師のジェラード・クラーク(Gerard Clarke)、精神医学教授のティモシー・ディナン(Timothy Dinan)、薬学上級講師のブレンダン・グリフィン(Brendan Griffin)です。この助成プログラムのもう1つの良い点は、知的財産権やフォローアップ研究の発表に関する制限が何もないこと。つまり、長期にわたる面倒なことが大幅に少ないのです。

あなたのプロジェクトはどんな取り組みを提案していますか。

ハイランド: プロジェクト案では、抗うつ薬や抗精神病薬に反応する個人の能力に腸内細菌叢がどう影響するかを検証するためにステップ・バイ・ステップのアプローチを取ります。まず、私たちやその他の研究者がすでに観察してきたことですが、うつ病患者群と対照群で腸内細菌叢の構成に明らかな違いがあることを改めて確認する必要があります。そのため、各群の個人全員から糞便試料を採取し、それを分析して、そこに存在する細菌集団と酵素を見極めます。試料採取前にどの参加者も薬剤を一切投与されていないことが望ましい。細菌叢の違いを確認したら、次は、ラボにおいて各試料の酵素、いわゆるフェカラーゼ(糞便酵素)の画分を、広く処方されている4つの薬剤(抗うつ薬2種と抗精神病薬2種)の1つにさらします。そして試料中の細菌酵素が薬物をどう代謝するかを見ます。私たちの仮説は、特定の個人の腸内細菌叢に由来する酵素活性が薬剤の構造または活性を変化させ、薬剤の効果を低くしたり、副作用などの問題を引き起こしたりする可能性があるというものです。

細菌、そしておそらくはプロバイオティクスも、個人の薬物代謝能力に影響を及ぼしている可能性がある

体内での薬物代謝をどうやって調べるのですか。

ハイランド: うつ病患者から採取した糞便試料を健康なラットに移植すると、ラットがうつ病の徴候を示し始めることがすでにわかっています。私たちはこれを踏まえ、ヒトの糞便試料をラットに移植します。2週間ほど後に各ラットの体内でヒト化された腸内細菌叢が確立されたら、各ラットに薬剤の1つを1回だけ投与して、体内で薬剤に起こることを見ます。これによって、うつ病状態におけるさまざまな薬剤に関する薬物動態データが得られるので、これを各ドナー試料の酵素活性や細菌叢プロファイルと併せて解析する計画です。

そうしたデータから得られる知見は、最終的に患者にどう役立つ可能性がありますか。

ハイランド: これらのデータを用いて、予測コンピューターモデルの構築に着手する計画です。いつの日か、患者の糞便試料のデータをコンピューターモデルに入力して、その患者が特定の薬剤にどう反応するかを予測できるようになれば、素晴らしいと思います。私たちの初期モデルは、うつ病患者に関する詳細を組み込んで抗うつ薬について検討することになりますが、その後さらに拡張して、別の疾患向けの他の薬剤に対する反応も予測できるようになるでしょう。これはぜひとも探りたい分野です。うつ病患者が健康な人とは異なる形で抗うつ薬を処理している場合、他の疾患向けの薬剤を代謝する能力も影響を受けることが予想されます。この種の研究への関心はますます高まりつつあります。特に昨今では、特定の細菌、そしておそらくはプロバイオティクスも、個人の薬物代謝能力に意図せぬ影響を及ぼして薬剤への反応を変えている可能性がわかり始めています。これは今後、巨大な研究分野になる可能性があります。

研究室にいないときは何をしていますか。

ハイランド: 仕事をしていないときは、ランニングをしているか、アドベンチャーレースに参加していますね。1日の仕事の前後に頭をすっきりさせるのはとても大事だと思います。雑念を取り払えばたくさんのアイデアが湧いてきます。

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審査委員は、世界各国の国際的に有名なヒト細菌叢研究者で構成されている。

ティナ・ラスク・リヒト

ティナ・ラスク・リヒト 審査委員長

デンマーク工科大学 国立食品研究所(DTU FooD、デンマーク)

エラン・エリナフ

エラン・エリナフ

ワイツマン科学研究所(イスラエル)

ポール・W・オトゥール

ポール・W・オトゥール

コーク大学およびAPCマイクロバイオーム・アイルランド(アイルランド)

カレン・P・スコット

カレン・P・スコット

アバディーン大学 ロウェット研究所(英国)

竹田 潔

竹田 潔

大阪大学大学院 医学系研究科(日本)

趙立平

趙立平

ラトガーズ大学(米国)
上海交通大学(中国)

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