Press release

今年のNature Index Research Leadersで発表されたデータは、世界における研究情勢の変化を示す

2025年6月11日

中国は研究論文の発表数(アウトプット)が大幅に増加し、アジアの機関が注目度を高めています。

ロンドン|北京|ニューヨーク|東京 2025年6月11日

Nature Index Research Leaders 2025:日本の結果の概要

  • 世界の国・地域別ランキングにおいて、日本は5位を維持したものの、日本のAdjusted Shareは、前年から9.0%減少しました。
  • 世界の研究機関ランキングトップ100にランクインした日本の研究機関は、東京大学(2025年:23位、2024年:21位)、および京都大学(2025年:55位、2024年:47位)です。Nature Indexが始まって以来、京都大学がトップ50から外れたのは初めてであり、今回のランキングは、両大学ともに最も低い順位を記録しました。
  • 2025年に新たに追加された指標「女性著者の割合」(2024年)において、沖縄科学技術大学院大学が30.2%を記録し、国内トップでした。

Nature Index Research Leadersの最新のデータによると、中国は研究論文の発表数(アウトプット) において、その優位性をさらに拡大しています (2024年のデータのみにもとづく-詳細は編集者への注記をご覧ください;以前の名称:Nature Index Annual Tables)。 同国のShare(シェア;Nature Indexの対象論文において、特定の拠点の著者による貢献度を測る指標)は32,122に達し、2023年と比べて17%増加しました。現在、中国の機関は、 Nature Index の上位10機関中8機関を占めています。 また、アジア諸国は全体的に優位を保っており、ランキング上位に占める欧米の機関の数は減少しています。

Nature Index Research Leadersは毎年発表され、前年のデータにもとづいています。本データは、多くの出版社から出版され、独立した研究者グループによって選出された145の質の高い自然科学および健康科学の出版物に掲載された研究論文への貢献を追跡するNature Indexの一部です。

「これらのデータは、グローバルな研究情勢における根本的な変化を反映しています」と、Nature IndexのChief EditorであるSimon Baker(サイモン・ベーカー)は述べています。「中国の科学技術への継続的な投資は、質の高い研究成果の急速な持続的成長につながっており、物理科学や化学などの分野では、米国を含め、これまで優位を占めていた欧米諸国を大きく上回っています。」

今年のランキングから得られたそのほかの主要な地域分析は次のとおりです:

  • アジアのほかの国でも研究論文の発表数が大幅に増加しました。中国を除く上位10カ国の中で、2023年からAdjusted Share(調整後のシェア:Nature Indexに登録された論文総数の年間変動を考慮したパーセンテージ変化の指標)が増加したのは、韓国とインドの2か国のみでした。韓国は4.1%、インドは2%増加しました。韓国は総合ランキングで7位に上昇し、カナダを追い抜きました。シンガポールは18位から16位に上昇し、7%の増加を記録しました。これは、中国に次ぐ上位20カ国中で2番目の増加率です。アジアの国における唯一の例外は、9%減少した日本でした。 
  • 主要な西欧諸国は、Adjusted Shareが2年連続で減少しました。カナダ、フランス、スイス、英国、および米国はいずれも少なくとも7%以上の減少を記録しました。オーストラリアとドイツは3%未満の減少を示しました。

機関レベルの分析は次のとおりです:

  • 中国の機関は、機関ランキングの上位10機関のうち8機関が占めています。中国科学院(CAS:Chinese Academy of Sciences)は首位を維持しました。中国科学技術大学(University of Science and Technology of China)は3位になり、浙江大学(Zhejiang University;Share 819.57)は10位から4位に上昇しました。
  • 西欧の複数の機関がランキングで順位を下げました。ドイツのマックス・プランク協会は4位から9位へ後退し、フランス国立科学研究センター(CNRS:National Centre for Scientific Research)は初めてトップ10から外れ、13位となりました。ハーバード大学は、Adjusted Shareが18%の減少を記録しましたが、2位を維持しました。一方、スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)はともにランキングで順位を落としました。スタンフォード大学は、15位から16位、そしてMITは、14位から17位になりました。米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)も順位が変動し、トップ20から24位へ後退しました。

今年のResearch Leadersに関するすべてのデータと分析は、https://www.nature.com/nature-index/research-leaders/2025でご確認いただけます。今回のデータは2024年のデータにもとづいています。

注:Nature Indexは、研究の質と機関のパフォーマンスを検討する際には、そのほかの多くの要素を考慮しなければならないことを認識しています。Nature Indexの指標だけで機関や個人を評価すべきではありません。Nature Indexのデータとメソッドは透明性があり、https://www.nature.com/nature-index/ のクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(creative commons licence)にもとづいて利用可能です。

<Nature Index Research Leaders 2025:日本の研究力>

2023年より、Nature Indexのデータベースでは、合計145誌にわたって、これまでの自然科学のジャーナル75誌と学際的ジャーナル5誌に加えて、医学ジャーナル65誌に掲載された一次研究論文も追加され、新たに健康科学分野の傾向を見ることができるようになりました。この分野の追加にともない、下記の概要は、自然科学分野と健康科学分野の両方を合わせた総合ランキングにもとづいた結果になります。

Nature Index Research Leaders: https://www.nature.com/nature-index/research-leaders/

Nature Index 2025年:国・地域別ランキング

日本の2024年のShareは、3185.39であり、国・地域別ランキングにおいて5位を維持しました。日本のAdjusted Shareは、前年から9.0%減少し、前年から増加した中国を除く、上位5カ国の中で2番目に少ない減少幅でした。上位5カ国の順位とAdjusted Shareの変化は、次のとおりです:1位 中国(+17.4%)、2位 米国(−10.1%)、3位 ドイツ(−2.0%)、4位 英国(−10.9%)、5位 日本(−9.0%)。

Nature Index 2025年:世界の研究機関ランキング

世界の研究機関ランキングトップ100にランクインした日本の研究機関は、東京大学(2025年:23位、2024年:21位)、および京都大学(2025年:55位、2024年:47位)です。Nature Indexが始まって以来、京都大学がトップ50から外れたのは初めてであり、今回のランキングでは、両大学ともに最も低い順位を記録しました。昨年、100位以内に入っていた大阪大学(2025年:103位、2024年:70位)は、今回トップ100から外れました。

トップ100位内の日本の機関の2024年のAdjusted Shareの変化は、京都大学が−10.2%、東京大学が−6.5%減少しました。

今年のNature Index Research Leadersにおいて、日本の研究機関の国内における機関の順位は、次のとおりです。

国内順位機関名世界順位(2024年)世界順位(2025年)前年との順位差
1東京大学21232
2京都大学47558
3大阪大学70103−33
4理化学研究所126115+11
5東京科学大学141132+9
6東北大学106143−37
7名古屋大学128151−23
8北海道大学122185−63
9九州大学219209+10
10物質・材料研究機構196222−26
11産業技術総合研究所382391−9
12筑波大学332392−60
13広島大学543446+97
14慶応義塾大学363477−114
15千葉大学600497+103

Institution benchmarking for Japan

Nature Index 2025年:女性著者の割合

2025年に著者の男女比率(Author gender ratio)の指標が新たに追加されました。女性著者の割合(2024年)において、日本では、沖縄科学技術大学院大学が30.2%を記録し、国内トップでした。Shareにおいて国内上位の東京大学と京都大学は、女性著者の割合の国内ランキングではそれぞれ20位(14.0%)と18位(15.2%)でした。女性が論文著者である割合(Proportion of female authorship)が多い国内の機関のランキングは次のとおりです。

女性著者の割合が高い日本の機関

国内順位

(Shareの国内順位)

機関名女性著者の割合(2024年)

1

(1)

沖縄科学技術大学院大学30.2%

2

(15)

千葉大学26.5%

3

(19)

早稲田大学26.1%

4

(13)

広島大学20.9%

5

(14)

慶応義塾大学19.7%

6

(4)

東北大学18.5%

7

(12)

筑波大学18.4%

8

(5)

理化学研究所18.2%

9

(8)

九州大学18.1%

10

(25)

海洋研究開発機構17.9%

10

(6)

東京科学大学17.9%

10

(3)

大阪大学17.9%

13

(7)

名古屋大学17.7%

14

(18)

自然科学研究機構17.4%

15

(20)

岡山大学16.4%

16

(17)

大阪公立大学16.1%

17

(11)

産業技術総合研究所15.8%

18

(2)

京都大学15.2%

19

(22)

金沢大学14.5%

20

(1)

東京大学14.0%

21

(16)

東京理科大学13.8%

22

(9)

北海道大学13.5%

23

(24)

高エネルギー加速器研究機構12.1%

24

(23)

名古屋工業大学9.8%

25

(10)

物質・材料研究機構4.0%

https://www.nature.com/nature-index/author-gender-ratio/leading-institutions?territory=countries-Japan&sector=all

世界のShare(2024年)上位5機関の女性著者の割合

順位機関名女性著者の割合(2024年)Share(2024年)
1中国科学院(中国)19.0%2940.43
2ハーバード大学(米国)38.2%1132.12
3浙江大学(中国)17.3%914.25
4中国科学技術大学(中国)13.9%894.14
5清華大学(中国)14.3%866.42

https://www.nature.com/nature-index/author-gender-ratio/leading-institutions

女性著者の割合の算出方法については、https://www.nature.com/nature-index/author-gender-ratio/methodology をご覧ください。

Nature Index 2025年:機関の国際連携

2024年に2つの機関の国際連携に関する指標が新たに追加されました。国際連携とは、異なる国や地域にある 2 つの機関が、Nature Index が追跡する学術誌に少なくとも 1 件の論文を共同執筆することです。2 つの機関間の連携スコア (CS:collaboration score) は、両機関が貢献した論文におけるそれぞれのShareの合計です。国内の機関と国外の機関における連携スコアが最も高かったのは、フランス国立科学研究センター(フランス)と東京大学です。

国内の機関と国外の機関における連携スコアのランキングは次のとおりです。(集計期間:2024年3月1日 – 2025年2月28日)

順位機関名CS
62

フランス国立科学研究センター(フランス)

東京大学

23.78
105

マックス・プランク協会(ドイツ)

東京大学

19.47
207

東京大学

ハーバード大学(米国)

15.52
227

中国科学院(中国)

東京大学

14.98
245

マックス・プランク協会(ドイツ)

理化学研究所

14.57

https://www.nature.com/nature-index/institution-collaboration/leading-international-collaborators/all/all/250

※ この順位は2025年6月11日時点のものです。Nature Indexのデータベースは定期的に更新されるため、最新の順位はhttps://www.nature.com/nature-index/ をご参照ください。

編集者への注記

Nature Index Research Leadersは、自然科学および健康科学分野における高い研究成果を示す良い指標ですが、読者が研究の質や機関業績を考える際に、データ、ソフトウェア、知的財産などほかの科学的成果とともにこのデータベースによる結果を利用することを推奨しています。

Nature Indexは、Nature Research Intelligenceの一部であり、高品質な科学研究の世界をナビゲートし、情報にもとづいた研究の決定を行い、確信をもって共同研究を行うことができるよう支援します。

Research Leadersのテーブルは、前年(今回の場合は 2024 年)のデータを毎年発表するものです。過去のResearch Leadersのテーブルは、データベースの変更を反映するために毎年更新されます。そのため、ランキングや指標は、最初に発表されたテーブルとは異なる場合があります。

Nature Indexに関する日本語ページ:https://www.natureasia.com/ja-jp/nature-index 

Nature Indexの指標について

Nature Indexは、機関の研究パフォーマンスにおける1つの指標です。Nature Indexのリストを作成するために使用されるCountShareの測定基準は、その分野の主要な科学者によって構成された独立したパネルによる評判にもとづいて選択された、合計145の自然科学(75)、健康科学(65)および多分野(5)のジャーナルにおける機関または国・地域の論文出版の成果にもとづいています。Nature Indexの主要な指標であるShareは、論文の著者のうち、その機関や地域に所属する著者の割合を考慮して、機関、都市、または国・地域に割り当てられる論文の分数カウントです。Adjusted Share (調整後のシェア)は、Nature Indexにおける論文の総数のわずかな年次変動を考慮に入れています。もう一つの主要なNature Index指標は、Countです。国・地域または機関は、その国・地域または機関から少なくとも1人の著者がいる各論文に対して、Countを1、与えられます。計算方法の詳細につきましては、下記をご覧ください。

Nature Indexでは、研究成果発表数の指標として以下の種類の算出方法を採用しています:

  • Count(カウント)(以前の名称:Article count(AC))– 論文において、ある国ないし機関から1人でも著者として名前があげられていれば、その国ないし機関の論文1点(Countを1)として数える計算方法。その論文に著者が1人しかいなくても、100人の著者がいても、それぞれの著者の所属国(または機関)において論文1点として数えられることになるため、同じ1本の論文が、複数の国(または機関)においてCountとして数えられることを意味します。
  • Share(シェア)(以前の名称:Fractional count(FC))– Shareは、ある論文に対する各共著者の相対的貢献度を考慮に入れる方法。論文1本につき最大Shareは1.0です。この1点分を、共著者全員が等しく貢献したという仮定のもと、共著者間で等しく分けます。例えば、10人の共著者がいる論文の場合、各共著者はそれぞれ0.1分のShareを割り振られることになります。(Nature Indexは、国、地域、または機関による論文への貢献を収集し、それらが2回以上カウントされないようにするために、Shareを使用します。機関のShareの合計は、個々の所属著者のShareを合計して計算されます。この計算法は、国と地域で同じですが、一部の機関は海外に研究拠点があり、ホスト国・地域の合計に加算されるため、複雑になっています。)詳細については、https://www.nature.com/nature-index/glossary をご覧ください。
  • Adjusted Share(調整後のシェア)とは、Nature Indexに登録された論文総数の年間変動を考慮したパーセンテージ変化の指標です。詳細については、https://www.nature.com/nature-index/news/adjusted-metric-explainer をご覧ください。

Nature Indexは、研究の質と機関のパフォーマンスを検討する際には、そのほかの多くの要素を考慮しなければならないことを認識しています。Nature Indexのデータとメソッドは透明性があり、https://www.nature.com/nature-index/ のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにもとづいて利用可能です。 

Nature Indexについて

2014年11月に初公開されたNature Indexは、所属する著者および機関の関係を示すデータベースです。Nature Indexは、独立した研究者グループによって選ばれた、合計145の質の高い自然科学と健康科学のジャーナルに掲載された研究論文への貢献度を追跡します。

Nature Indexは、機関レベルおよび国・地域レベルでの発表論文の絶対数および割合数を提供します。そのため、質の高い研究成果および共同研究のグローバルな指標となります。Nature Indexのデータは定期的に更新され、直近12か月のデータは、https://www.nature.com/nature-index/ のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにもとづいて利用可能になります。 データベースは、シュプリンガーネイチャーの一部であるNature Research Intelligence によって管理されています。

詳細につきましては、Nature IndexのFAQGlossaryをご覧ください。

Nature Indexの一覧に掲載された大学・研究機関・企業に向けて「Nature Indexバッジ」を提供しております(無償)。このバッジは、ウェブサイトやSNSのプロモーションにご活用いただけます(例)。バッジをご希望の場合は、フォームにご記入のうえ、お申し込みください。

Nature Research Intelligenceについて

Nature Research Intelligence(NRI;ネイチャー・リサーチ・インテリジェンス)は、現実社会での影響に特に焦点を当てて研究機関の皆様に結果を提示します。それにより、研究プロジェクトから最大限のメリットを引き出すうえで最も効果的な研究戦略や共同研究を見極めることができます。

研究機関の皆さまは、Nature Research Intelligenceの幅広いデータ分析ソリューションを活用していただくことで、研究環境に関する詳細な評価を入手し、その分野における所属機関の順位を把握するとともに、情報過多にならない簡潔な研究概要書を作成することができます。これに加え、NRIは、皆さまが今後の研究戦略を策定し、最適化する支援もいたします。

詳細につきましては、nature.com/research-intelligence をご覧ください。Nature Research Intelligenceは、シュプリンガーネイチャーの一部です。

ネイチャーポートフォリオについて

ネイチャーポートフォリオは、生命科学、物理学、化学および応用科学など多岐にわたる分野で高品質のジャーナルやサービスを通じて、科学と社会の進歩に貢献しています。

ネイチャーポートフォリオは、世界有数の週刊の国際科学誌Nature(1869年創刊)を出版しています。さらに、ネイチャーポートフォリオは、Natureリサーチ誌とNatureレビュー誌をはじめ、主要なオープンアクセス学際誌であるNature Communications、およびScientific Reports を含むオープンアクセスジャーナルを出版しています。これらのジャーナルには、世界で最も重要な科学的発見が掲載されています。

オンラインのnature.comには、1カ月当たり900万人を超えるユーザーが、Nature のニュース記事やコメント記事、そしてNature Careersなどの科学求人サイトにアクセスしています。また、シュプリンガーネイチャーの一部であるネイチャーポートフォリオは、オンラインおよび対面によるトレーニングなど、さまざまな研究者支援サービスも提供しています。詳細は、nature.com および@NaturePortfolioをご覧ください。 

シュプリンガーネイチャーについて

シュプリンガーネイチャーは、世界をリードする研究出版社のひとつです。当社は、最も多くのジャーナルや書籍の出版数を誇り、オープンリサーチのパイオニアでもあります。180年以上にわたって信頼されてきた主要ブランドを通じて、研究者が新たなアイデアを見いだしてそうした発見を共有すること、医療従事者が医学の最前線に立ち続けること、教育者が学習を促進することを支援するテクノロジーを活用した製品、プラットフォーム、およびサービスを提供しています。当社は、当社が支援するコミュニティーとの協力のもと、知識を共有し、世界に対する理解を深めるための進歩に貢献していることを誇りに思っています。詳細は、about.springernature.comおよび@SpringerNatureをご覧ください。

本件に関するお問い合わせ

宮﨑 亜矢子
シュプリンガーネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。

英語プレスリリース:Data released in this year’s independent Nature Index Research Leaders tables shows shift in global research landscape

 

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