Press release

シュプリンガー・ネイチャーとUniversité Grenoble Alpes、科学論文の捏造問題に対処する強化型インテグリティーソフトウェアを無料で公開

2022年4月4日

SciDetectオープンソースソフトウェアを基盤とするPySciDetectにより、捏造された研究やデータを投稿時点で特定

ロンドン|グルノーブル 2022年3月31日

シュプリンガー・ネイチャーは本日、捏造研究を特定する次世代型オープンソース研究インテグリティーソフトウェア「PySciDetect(パイ・サイ・ディテクト)」の公開について発表いたします。PySciDetectは、Slimmer AIとともに社内で開発し、Université Grenoble Alpes(グルノーブル・アルプ大学;フランス)のCyril Labbé博士との協力のもとで公開するものであり、すべての出版社と学術コミュニティーに属する人々がダウンロードし、使用することができます。PySciDetectは、2015年に発表されたSciDetectソフトウェアを基盤としており、下記のとおり、2つの新たな特徴を備えています。

  1. 進化したAI技術を利用し、捏造データや捏造研究を老巧時点で検出する1精度と速度を改善。
  2. プログラミング言語「Python」2を使用して記述したことにより、最新のITインフラとの互換性を強化し、アクセス可能な利用者グループを拡大。

シュプリンガー・ネイチャーのProcess and Content ManagementのVice PresidentであるVolker Boeing(ボルカー・ボーイング)は、次のように述べています。

「出版社は、研究のインテグリティー(公正性)を維持するうえで重要な役割を担っています。シュプリンガー・ネイチャーでは、その公約の一環として、信頼性の高い健全な研究の実践に向けた重点的な取り組みを引き続き強化しており、そのためのサポートとして誤った捏造された研究コンテンツや不正行為への対処とその防止を目的とした調査ツールへの投資を増やしています。PySciDetectは、その一例です。ソフトウェアは、人間による評価や専門家による査読に代わる存在とすることが目的ではなく、また、そのような存在とするべきものではありません。しかし、ソフトウェアを利用すれば、論文を受理(アクセプト)する前に、そこに含まれている不正な研究やデータを短時間で特定する新たな方法を得ることができます。また、今回の取り組みにより、その精度もさらに改善されます」

その公開以来、SciDetectは数多くの出版社や学術コミュニティーのメンバーに利用されてきました。シュプリンガー・ネイチャーでは、同ソフトウェアを利用し、380万件以上のジャーナル論文と250万件以上の書籍のチャプターを精査してきました。PySciDetectは、オープンソースソフトウェアとして提供されることから、学術コミュニティーのパートナーとして積極的に行動するという当社のコミットメントを強化するとともに、不正な科学研究を検出し、学術記録の公正性を保護するという共同での取り組みをサポートするものとなります。

<注釈>

1. PySciDetectの前身であるSciDetectの場合、作成されたテキストのうち、ボリュームの大きな捏造テキストしか検出することができませんでしたが、PySciDetectでは、より細分化して検出することが可能です。

2. シュプリンガー・ネイチャーとの協力のもと、Slimmer.aiが新ソフトウェアを書き直し、実装しています。

編集者への注記:

PySciDetectの仕組みについて

PySciDetectを論文投稿のワークフローに組み入れることにより、研究を精査し、SCIgenなどの捏造論文生成ソフトやコンピュータプログラムによって作成されたテキストやデータを特定します。そのためには、不正論文の集積との関連から投稿論文の類似性を計算し、投稿された研究と捏造科学論文を比較します。さらに、PySciDetectは該当する論文について、検出された疑わしいコンテンツをハイライトしたレポートを作成し、文書の捏造部分とそれ以外の部分を示します。現在のPySciDetectは、Pythonを使用して記述されています。したがって、互換性を有するITインフラの範囲が拡大しており、ほかの出版社や学術コミュニティーのメンバーによるダウンロードや組み入れが格段に容易になっています。

PySciDetectの利用者について

PySciDetectは、GNU一般公衆利用許諾書(バージョン3)にもとづいてダウンロードすることができます。したがって、研究・学術コミュニティー全体による利用が可能です。ソフトウェアは、SciDetectのウェブサイトからダウンロードすることが可能です。

シュプリンガー・ネイチャーは、175年以上にわたり、研究コミュニティー全体へ最良のサービスを提供することによって発見の進展に貢献してきました。研究者が新しいアイデアを公開することを支援するとともに、出版するすべての研究が重要で着実であり、客観的な精査にも耐え、関心をもつすべての読者にもっとも良いフォーマットで届き、発見、アクセス、使用、再利用、および共有されるようにします。私たちは、テクノロジーやデータの革新を通じて図書館員や研究機関をサポートし、学会に出版を支援するための優良なサービスを提供します。

学術出版社として、シュプリンガー・ネイチャーは、シュプリンガー(Springer)、ネイチャー・ポートフォリオ(Nature Portfolio)、BMC、パルグレイブ・マクミラン(Palgrave Macmillan)、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)などの信頼されたブランドを有しています。

詳しい情報は、springernature.com をご覧いただき、@SpringerNature のフォローをお願いいたします。

グルノーブル・アルプ大学は、グルノーブルとヴァランスの主要な公立高等教育機関が集まり、地域に根ざし、学際的かつ国際的に開かれた大学です。また、国内の研究機関や国際的な研究施設と連携し、世界的な規模でイノベーション方針を構築しています。進歩の原動力として、また、イニシアティブの実験室として、多くのパートナーと協力し、社会の進化に貢献しています。グルノーブル・アルプ大学について詳しくは、大学のウェブサイトをご覧ください。

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宮﨑 亜矢子
シュプリンガー・ネイチャー
コーポレート・アフェアーズ
E-mail: ayako.miyazaki@springernature.com

※ 本プレスリリースの原本(一部を除いて)は英語であり、日本語は参考翻訳です。

英語プレスリリース:Springer Nature and Université Grenoble Alpes release free enhanced integrity software to tackle fake scientific papers

 

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