【惑星科学】火星上に有機物はあるのか
Scientific Reports
2014年11月13日
Planetary science: Is there organic matter on Mars?
火星着陸船が火星の土壌で行った実験でクロロメタンの放出が検出されたが、これが火星表面の有機物の存在を示しているのかについては論争が続いている。この論点についての研究をさらに進めた結果が今週報告される。この研究では、隕石の試料を用いて火星着陸船の実験が再現され、隕石に含まれる有機物からクロロメタンが放出されたことが確認された。この結果は、火星で観測されたクロロメタンの放出が、火星の地表に存在する隕石の破片に含まれる有機物に由来する可能性を示している。
過去2回の火星探査ミッションでクロロメタンが検出され、このクロロメタンが、火星の土壌に含まれる有機物の熱化学反応の産物なのか、あるいは地球由来の汚染物質なのかを調べる研究が行われてきた。今回、Frank Kepplerたちは、前者の可能性があるとする考えを示し、その理由として、地球上でも塩化物の存在下で有機物が関係する類似のプロセスが起こっていることを挙げている。そして、Kepplerたちは、このプロセスによって、1969年にオーストラリアに落下したマーチソン隕石に含まれる物質からクロロメタンが生じることを実証した。
マーチソン隕石の試料から生じたクロロメタンの解析では、クロロメタンが地球外起源の有機物から生じたことを示唆する独特な同位体特性(一意的な化学的痕跡)が明らかになった。この結果を受け、Kepplerたちは、火星上で検出されたクロロメタンの同位体分析を行えば、クロロメタンの起源が、隕石によって堆積した火星固有の有機物なのか、地球から送り込まれた火星着陸船による汚染なのかを判別できる可能性があるという。
doi: 10.1038/srep07010
注目の論文
-
11月13日
気候変動:ムンバイにおける異常降雨に関連した不均衡な死亡率Nature
-
11月7日
考古学:デジタル地図によりローマ帝国の道路網が10万キロメートル増えるScientific Data
-
11月5日
気候:極端な強風がタービンの限界を超えて動かす可能性があるNature Communications
-
11月4日
地球科学:南極氷河の急速な後退Nature Geoscience
-
10月30日
惑星科学:圧力下で水の世界が形成されるかもしれないNature
-
10月30日
気候変動:南極の棚氷が海洋温暖化によって脅威にさらされているNature
