海洋の温暖化はどこで起こっているのか
Nature Climate Change
2014年10月6日
Locating ocean warming
南半球の水深700メートルまでの海洋上層での温暖化速度が過小評価されていた可能性が生じ、2005~2013年の間、水深2キロメートル超の深海は温暖化しておらず、海水準の上昇に対する寄与もわずかなものだったことが、2つの独立した研究によって明らかになった。いずれの研究も、熱が蓄積されている海洋に関する新たな手掛かりをもたらし、大気の温暖化と海水準上昇にとって重要な意味を持っている。これらの研究結果について報告する2報の論文が、今週のオンライン版に掲載される。
海洋は、気候システムにとって重要な熱の貯蔵庫であり、人間活動によって発生する熱の90%以上が貯蔵されている。
今回、Paul Durackたちは、気候モデルから得られた結果と直接観測と人工衛星による海水準データを組み合わせて、1970年代以降の海洋上層での温暖化傾向を調べた。その結果、観測に基づいた温暖化速度と気候モデルによる結果との一致度が低いことが分かり、Durackたちは、その原因として南半球でのサンプリング不足を挙げている。そして、Durackたちは、より多くのサンプリングがなされた北半球でのデータを用いて、南半球の温暖化速度を48~152%上方修正すべきだという見解を示している。
一方、William Llovelたちは、人工衛星による海水準上昇と海洋質量変化のデータを用い、それと(海面から水深2キロメートルまでの水柱プロファイルを明らかにする)アルゴ(Argo)フロートによる直接観測結果を組み合わせて、海水準の上昇と全球的なエネルギー収支と関連付けて深海の温暖化を調べた。その結果、2005~2013年の間、深海で温暖化が起こらなかったことが判明した。
関連するNews and Viewsで、Gregory JohnsonとJohn Lymanは、この2つの研究が「地球の気候変動(例えば、大気温度と海水準の将来的な上昇)の解明と予測にとって海水温の測定が重要なことを明確に示している」点を論じている。
doi: 10.1038/nclimate2387
doi:10.1038/nclimate2389
注目の論文
-
9月18日
気候変動:温暖化によるサンゴ礁の緩衝機能の危機Nature
-
9月18日
古生物学:初期のドーム頭を持つ恐竜Nature
-
9月17日
気候変動:温暖化が熱帯地域の土壌からの二酸化炭素排出を増加させるNature Communications
-
9月12日
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
9月11日
惑星科学:火星の泥岩に残る特徴が古代の環境条件を解明する手がかりとなるNature
-
9月11日
惑星科学:地球近傍小惑星リュウグウの母天体には長い流体の歴史が存在するNature