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【植物科学】作物収量に対するエルニーニョの全球的影響

Nature Communications

2014年5月15日

Plant science: Global impact of El Nino in crop yields

ダイズやイネなどの主要作物に対するエルニーニョ/南方振動(ENSO)の全球規模での影響を示した論文が、今週発表される。ENSOに関する季節予報の信頼性の高さを考えると、世界の作物収量の特異的変動をENSO期と関連づけることにより、食料供給量の監視と飢餓早期警報システムを改善できる可能性がある。

エルニーニョ年とラニーニャ年には、熱帯太平洋東部の海面水温の変化が、異常な気温パターンと降雨パターンをもたらし、それぞれの地域次第で作物収量に正または負の影響を及ぼすことが分かっている。しかし、収量に対する全球規模でのENSOの影響は、この現象の全体的な影響を評価する地球地図がないため、まだ明確になっていない。

今回、飯泉仁之直(いいずみ・としちか )たちは、1984~2004年のトウモロコシ、ダイズ、コメ、コムギの収量に対するENSOの平均的影響を示す地球地図を公表した。今回の研究では、エルニーニョが 1) 米国南東部、中国、アフリカ東部と西部、メキシコおよびインドネシアのトウモロコシ、2) インドおよび中国の一部地域のダイズ、3) 中国南部、ミャンマーおよびタンザニアのコメ、4) 中国の一部地域、米国、オーストラリア、メキシコ、およびヨーロッパの一部地域のコムギに負の影響を及ぼすことが示された。これらの事象は、反対に 1) ブラジルとアルゼンチンのトウモロコシ、2) 米国とブラジルのダイズ、3) 中国の一部地域とインドネシアのコメ、4) アルゼンチン、南アフリカおよび一部地域のコムギなどにおいて、世界の収穫面積の30~36%で作物収量に正の影響を及ぼしていた。また、世界の全作物収量に対する正負の影響はラニーニャよりエルニーニョの方が大きいが、コメとコムギの世界的な平均収量に対する深刻な負の影響は、エルニーニョよりラニーニャの方が大きいことが指摘された。

飯泉たちは、今回の研究で概要を示した地図により、輸出依存国の中央政府が、現在および予測されているENSO期をもとに地域貿易と備蓄を管理し、消費者への手頃な価格の食料供給を確保することが可能になると考えている。

doi: 10.1038/ncomms4712

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